「良いサウナ室の条件とは①」「良いサウナ室の条件とは②」では、Niilo Teeriの論文の内容を紹介し、理想的なサウナ環境について考えてみました。他にサウナ室の理想の環境を表す指標として、「200の法則」を提唱している人たちがいます。今回は、この「200の法則」を軸に、サウナ室の温度と湿度について考えてみます。
Rules of 200
Sauna Marketplaceというサイトでは Ideal Temperature For a Sauna(理想的なサウナ室の温度)という項目で"Rules of 200"、「200の法則」が紹介されています。
Due to the effect on relative humidity, you can’t answer what the ideal temperature for a sauna is without addressing humidity. The way TyloHelo, The North American Sauna Society, and others address the ideal temperature including humidity is with the ‘Rule of 200.’*1
(相対湿度の影響があるため、湿度を考慮せずにサウナの理想的な温度を語ることはできません。TyloHeloやThe North American Sauna Societyらは湿度を考慮した理想的な温度について「200の法則」で説明しています。)
湿度の高い、低いによって体感温度が変わることは、サウナに行く人は経験上よくわかっていることかと思います。サウナの温度や湿度について調べていると、Rules of 200という言葉を複数のページで見かけました。Rules of 200、200の法則とは何でしょうか。Sauna Marketpleceでは次のように説明されています。
The “Rule of 200” says the sweet spot for most people is when the Temperature and Relative Humidity equals 200 degrees fahrenheit. The theory rests on the idea that a bathers comfort is a function of temperature and humidity.*2
(「200の法則」は、多くの人にとって温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計が200になるところが心地よいところだと言います。これは、サウナに入る人の快適さには温度と湿度両方によるという考えに基づくものです。)
別の記事でも、同じような説明がされています。
sometime referred to as the “Rule of 200” where the ideal environment for a sauna is when the % humidity + the temperature in Fahrenheit equals 200. *3
(「200の法則」とも呼ばれますが、これはサウナ室の理想的な環境は湿度(%)と温度(華氏F)の合計が200になる時であるというものです。)
つまり、温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計が200になるのが、理想的なサウナ室の環境だと考えるのが、「200の法則」のようです。次のような記述もあります。
As a general rule of thumb, TyloHelo uses its "Rule of 200”that simply states the maximum combination of air temperature and humidity combined should not exceed 200. It’s totally up to user preference to find what is comfortable.*4
(一般的な経験則から、TyloHeloは「200の法則」を用います。これは、単純に温度と相対湿度の合計が200を超えるべきではない、というものです。何が快適か、ということについては、完全に利用者の好みの問題です。)
ここでは、何が快適かということはそれぞれの好みであるけれど、温度(華氏F)と湿度(%)の合計は200を超えない方が良い、とされています。
「200の法則」に関する記述をまとめると、温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計が200になるサウナ室環境が多くの人にとって心地良い、理想的な環境であり、200を大きく超えない方が良い、ということになります。温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計が200に近い、200以下の値であるのが理想的なサウナ室環境、ということです。
日本では温度を表示するのに一般的に華氏(F)ではなく摂氏(℃)を使います。過去の実測結果をもとに、座面温度を華氏に直してみて、相対湿度を足した値が200に近いのか遠いのか、見てみたいと思います。
実測結果
「サウナと温度 座面温度の計測~男性サウナ室~」 で使用した座面温度の数値と、「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」で使用した相対湿度の数値を用いて、温度を華氏に換算して相対湿度と足してみました。
摂氏から華氏への換算は、Metric Conversions.というサイトを使用しました。
計算で得られた「200」との差の値を基準に、施設を再度並び替えてみました。
「200の法則」では、温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計が200になる温湿度が多くの人にとって心地良いサウナ環境であるとされていました。
差が1未満でほぼ200のニューウイングとサウナセンターは、「200の法則」からすると最も快適とされる値であると言えそうです。また、草加健康センター、ユーランド鶴見、ロスコも、200との差は1桁にすぎず、ほぼ200と言え、快適な温湿度環境の範囲であると言えます。
その他の施設については、温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計が200と2桁の差がありますが、確かにこれらの施設はロウリュがないと物足りなかったり、少々極端なセッティングであったり、癖のあるサウナ室だったりします。好みはありますし、それが良くない環境だということではありませんが、「多くの人にとって快適」であるという「200の法則」における理想値とは差があり、実際に体感としてもロウリュをすることで快適な環境になったり、極端・癖のあるセッティングではあります。
「 サウナと湿度 絶対湿度の算出~男性サウナ室~」では、Teeriの論文において快適な湿度帯であるとされる絶対湿度40g/kg~60g/kgという値を参考に、温度と絶対湿度を用いてグルーピングをしてみました。
Aは湿度は低いが温度が高い、いわゆる昭和ストロングスタイルと呼ばれるカラカラのサウナ、Bは中温中湿、ロウリュをすることで更に体感が熱くなるサウナ、Cは高温高湿でロウリュなしでも十分に体感の熱いサウナ、Dは温度湿度共に極端に高いサウナでした(詳しくは「 サウナと湿度 絶対湿度の算出~男性サウナ室~」をご覧ください)。
この中で、快適とされている絶対湿度の湿度帯に入る施設は以下の5施設でした。
・草加健康センター
・ニューウイング
・マルシンスパ
・アダムアンドイブ
・スカイスパYOKOHAMA
この5施設、「200の法則」の観点から見てみると、以下のところに位置します。
5施設のうち草加健康センターを除く4施設は200以下の値になっています。先にあげた「200の法則」についての記述には、「the maximum combination of air temperature and humidity combined should not exceed 200(温度と相対湿度の合計が200を超えるべきではない)」*5という条件がありました。200に近いことに加えて、200を超えない、ということも重要だと言えます。
絶対湿度の観点から快適な湿度帯に入るとされる施設のほとんどが、温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計が200を下回っています。また、草加健康センターも200を超えているとは言え差は1桁であり、ほぼ200の範囲と考えて良いでしょう。絶対湿度について快適であるとされる範囲に位置している施設は、「200の法則」から考えても快適であると言えそうです。
今回は、「200の法則」について紹介し、過去に計測した男性サウナ10施設について、温度(華氏F)と相対湿度の合計値を出して200との差を見てみました。次回は女性サウナ10施設について、算出してみます。
参考文献
CISION PR web, "TyloHelo Inc Launches PolarSaunaUSA.com for Sauna Parts and Accessories"
Sauna Marketplece, "Typial Sauna Temperature, Relative Humidity, and the “Rule of 200”"