Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

サウナについて調べ、考え、まとめるブログ。知れば知るほど、サウナにはまだまだ謎がある。その謎を解き明かしていくために、サウナについて様々な角度から考察してサウナ理解を深めます。身体で感じるだけでなく、頭で仕組みを考えるとサウナはもっと楽しい。サウナ好きがサウナをもっと知りもっと楽しむために始めたサウナ考察ブログ。 お問合せは下記までどうぞ。 saunology37@gmail.com

サウナと温度 座面温度の計測~男性サウナ室~

 「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」「サウナと湿度 計測~女性サウナ室~」では、サウナ室の相対湿度がどれくらいなのか実測を試みました。では、絶対湿度はどうでしょうか。絶対湿度を算出するには、温度が必要です。今回は、私たちがサウナ室で座っているところの温度がどのくらいなのか、座面の温度の計測結果をまとめます。

 

表示温度と座面温度

 多くのサウナ室には、温度計が設置されています。「ここは100℃をこえている!」「ここは80℃でマイルドだ」など、私たちは温度計の数値について口にすることがあります。

 しかし、サウナ室に設置されている温度計の位置は施設によって様々です。そして、同じサウナ室でも温度計の位置によって温度は大きく変わることがわかっています。

 株式会社アクトパスの代表取締役、望月義尚さんのブログ「温泉・温浴コンサルタントブログ【一番風呂日記】」では、一つのサウナ室の中で、温度計の位置によって50℃以上の差があったということが指摘されています。

サウナ室での温度計の位置による温度の差

(画像出典:「温泉・温浴コンサルタントブログ【一番風呂日記】」

 これはあるスーパー銭湯のサウナ室の温度を計測したものだそうで、一番低いところの計測結果は53℃、一番高いところの計測結果は110℃と、50℃以上差があることがわかったのです。この結果からもわかるように、サウナ室では高いところほど温度が高くなります。位置が高いところほど温度が高くなる仕組みについては、次の記事で詳しく説明します。

 サウナ室の空気の温度は一律ではなく、高いところほど温度が高くなります。表示温度は同じだけど、体感の熱さにはかなり差がある、ということはよくあります。これには湿度などさまざまな要因が関係してきますが、温度計の位置にもよると言えるでしょう。温度計は比較的高い位置に設置されていることが多いですが、実際に私たちが座っている位置の温度はどのくらいなのでしょうか。

    

座面温度計測の条件

・2018年11月~2019年2月に計測を試みた約50施設のうち、「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」と同じ関東の10施設の男性サウナ室を選定。

・計測位置は原則、サウナ室の最上段の背中から腰の間。

・計測時間は温度計の針が安定するまでの20~30分程度とし、ロウリュを実施している施設の場合は、なるべく影響を受けないようにロウリュ後から30分以上あけて計測*1

・誤差を少しでも小さくするため、一つの施設につき必ず複数回計測し、その平均値を使用。

・温度計に故障・不調が見られたら新しいものに変えて再計測。 


計測対象の10施設

 「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」と同様に、以下の10施設で計測を実施しました。

 ①サウナ錦糸町(東京都墨田区)

 ②ヨコヤマ・ユーランド鶴見(神奈川県横浜市)

 ③カプセル&サウナ ロスコ(東京都北区)

 ④サウナリゾートオリエンタル(東京都港区)

 ⑤サウナセンター(東京都台東区)

 ⑥アダムアンドイブ(東京都港区)

 ⑦マルシンスパ(東京都渋谷区)

 ⑧湯乃泉 草加健康センター(埼玉県草加市) 

 ⑨ニューウイング(東京都墨田区)

 ⑩スカイスパYOKOHAMA(神奈川県横浜市)


計測結果

 まず、サウナ室にある温度計の表示温度をまとめたものが以下となります(表示温度の降順)。

男性サウナの温度計の表示温度

 

 次に座面温度の計測結果をまとめたものが以下となります。

男性サウナの座面温度の計測結果

 

 表示温度と座面温度の差は、小さいところでは0.5℃、大きいところでは31℃でした。

 「草加健康センター」は、最上段の3段目の座面の高さと設置されている温度計の位置の差がそれほど大きくなく、また天井との距離も近いことが、差の最も小さかった理由だと考えられます。それに加えて、これほど差が小さい背景には対流の強さもあると考えられます。対流により部屋全体に熱い空気がまわっているということも理由の1つだと言えそうです。

草加健康センター

 (画像出典:サナタイムサウナ銘店探訪6 温泉旅行に行くよりも、ここで全てが揃う 「草加健康センター」)
 

 差が比較的小さい「サウナセンター」も椅子は3段まであり、最上段の座面は比較的天井と近い高さにあります。 

サウナセンターのサウナ室

(画像出典:サウナセンターHP)

 

 「ニューウイング」も比較的差が小さいですが、こちらは最上段の3段目と2段目どちらとも同じ温度でした。一般的なサウナ室とは異なりヒーターがベンチ下に格納されている影響もあり、室内の上部と下部の温度の差が小さいのかもしれません。

ニューウイングのサウナ室

(画像出典:ニューウイングHP)

 

 「ユーランド鶴見」も差が小さいのですが、こちらは座面が特別に高いというわけでもなく、天井との距離が近いわけでもありません。それにも関わらず表示温度と座面温度の差が小さいのは、対流熱や壁材の黄土の影響もあるのでしょうか。

ユーランド鶴見のサウナ室

(画像出典:ユーランド鶴見HP)

 

 一方、「マルシンスパ」は比較的差が大きい方でした。温度計と、計測を試みた座面との距離は近いので、ここまで差が出たのは意外でした。しかしながら体感とは合致する結果です。温度計は天井のすぐ下に位置していますが、「マルシンスパ」は天井の低いサウナ室で、座面と温度計の位置にはそれほど距離はありません。にも関わらずこれだけ温度に差があるということは、換気口の位置などによる対流も関係しているかもしれません。天井に熱が溜まりやすいサウナ室だと考えられます。

マルシンスパのサウナ室

(画像出典:マルシンスパHP)

 

  「アダムアンドイブ」はここまで差が出たのが予想外でした。体感も熱いため表示温度の方が体感に合致するイメージです。壁材が黄土・純金・大理石など複数で、「ユーランド鶴見」の黄土と同様に一般のサウナ室と違い特殊なため、その影響もあるのでしょうか。相変わらず謎が多いサウナです。

アダムアンドイブのサウナ室

(画像出典:アダムアンドイブHP)

 

 「サウナ錦糸町」は差はともかく、座面温度で唯一100℃越えをたたき出しました。圧巻です。

サウナ錦糸町のサウナ室

(画像出典:サウナ錦糸町HP)

 

 全体的な印象として、表示温度と座面温度の差の理由が不明なものが多いと感じました。単純に温度計と座面の位置の距離だけではなく、さまざまな要因が温度に影響していると言えそうです。表示温度との差については謎も残りますが、実際に私たちが座っている位置での温度がわかりましたので、この座面温度と「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」で結果をまとめた相対湿度を使って、今度は10施設の絶対湿度を算出してみたいと思います。

 その前に、次回は女性施設の座面温度計測結果を紹介します。

 

参考資料

株式会社アクトパス代表取締役 望月義尚、「温泉・温浴コンサルタントブログ【一番風呂日記】」(最終閲覧日:2019年3月16日)

*1:湿度とは異なり、温度にはロウリュはほぼ影響がないが、ロウリュサービス前に扉を開けて空気を入れ替える場合などもあるため、30分以上時間をあけて計測した。