Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

サウナについて調べ、考え、まとめるブログ。知れば知るほど、サウナにはまだまだ謎がある。その謎を解き明かしていくために、サウナについて様々な角度から考察してサウナ理解を深めます。身体で感じるだけでなく、頭で仕組みを考えるとサウナはもっと楽しい。サウナ好きがサウナをもっと知りもっと楽しむために始めたサウナ考察ブログ。 お問合せは下記までどうぞ。 saunology37@gmail.com

カラカラサウナのいろいろ~男性サウナ室~

 日本の高温カラカラサウナは間違っている、というような発言も話題になりましたが、日本の高温カラカラサウナ vs 本場フィンランド式高湿サウナ、という構図で語られることがあります。「カラカラ」と体感から言ってはいますが、「カラカラサウナ」にも実際はいろいろなサウナ室があるように思います。今回は、カラカラサウナについて考えてみます。

 

カラカラサウナとは

 カラカラサウナと体感に基づいて言いますが、「カラカラサウナ」で想像するサウナ室は人によっても違いそうです。どこまでを「カラカラサウナ」と考えるかは人によって差があると考えられます。

 「サウナと湿度 そもそも湿度とは」で見たように、人間には湿度を直接体感できる器官はなく、私たちは汗の蒸発具合や、口や鼻から水分を持っていかれる感覚などから湿度の高低を判断しているわけです。また「サウナと湿度 体感湿度」では、2010年1月6日放送のNHK「ためしてガッテン」で行われた湿度の体感に関する実験を紹介し、人の湿度の体感は、人が通常生活する温度環境では非常にあいまいであるということを確認しました。ただし、高温環境では、湿度の体感はある程度実際の数値に近いものになりそうであるということも紹介しました。

 普段生活していてもあまり感じず、高いか低いかの判断があいまいな湿度も、サウナ室ではその高低を体感できるだろうことは、以下のように通常生活する環境とサウナ室のような高温環境とで、同じ相対湿度10%の変化でも増減する空気中の水蒸気量(絶対湿度)の変化が大きく違うということからも想像できます。 

サウナの温度と湿度

サウナの温度と湿度

 

 また、サウナ室のような高温環境では、通常の温度環境よりは湿度の体感と実際の数値が近いということは、「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」「サウナと湿度 計測~女性サウナ室~」など湿度計測結果に関する一連の記事でも指摘しました。

 カラカラサウナについて考えるにあたり、今回は体感の湿度が高いもの、低いものと分けた時に、低い方に入るサウナ室について、改めてデータを見てマッピングしてみることにします。 

 

体感が低湿度のサウナ室の相対湿度

 まずは、体感が低いと感じるサウナ室の相対湿度を計測した結果をまとめてみます。

相対湿度は、その温度の空気が含むことができる最大の水分量(飽和水蒸気量)に対して、今何割くらいの水分を含んでいるかという割合です。

 

・2018年11月~2020年3月にかけて計測を試みた約100施設のうち、湿度が低いと感じるサウナ室を選定。

・計測位置は原則、サウナ室の最上段の背中から腰の間。

・計測時間は湿度計の針が安定するまでの20~30分程度とし、ロウリュを実施しているもしくはセルフロウリュが出来る施設の場合は、なるべく影響を受けないようにロウリュ後から30分以上あけて計測。

・誤差を少しでも小さくするため、一つの施設につき必ず複数回計測し、その平均値を使用。

・湿度計に故障・不調が見られたら新しいものに変えて再計測。

・利用者が多い時と少ない時とで湿度に大幅に差が出るケースも見受けられたため、入室率が50%を超えた場合は計測結果から除外。

 

 体感の湿度が低いと感じるサウナ室の相対湿度をまとめると次のようになります。

サウナの湿度

※湿度0%になった施設については、市販の湿度計で精緻な値の計測は難しいためか実際にはあり得ない値になりましたが、複数回かつ湿度計も替えて計測した結果が一貫して0%ということから、湿度は他の施設と比べて「低」いということが想定できます。

 

 体感の湿度が低いと感じるサウナ室の相対湿度の平均は6.65%になります。一方、「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」で取り上げた湿度に幅がありそうな10施設の相対湿度の平均は10%であり、体感が低いと感じるサウナ室は実際相対湿度も低めであると言えます。空気中の水分を直接感じ取る、湿度を直接体感する器官がない以上、私たちの湿度の体感は基本的に相対湿度で考えるべきであり、湿度に幅がありそうな10施設に比べて湿度が低いと感じるサウナ室の相対湿度平均が低くなるのは当然と言えば当然かもしれません。しかし、湿度が低いと感じるサウナ室の相対湿度の数値を見ると、平均値は10施設のものより低いとは言え幅があることがわかります。

 

体感が低湿度のサウナ室の絶対湿度

  割合で湿度を示す相対湿度に対して、その空気の中に実際にどのくらいの水分が含まれているかを示すのが絶対湿度です。計測した相対湿度と、座面で計測した座面温度を元に、絶対湿度と座面温度をまとめてみました。座面温度の計測方法は相対湿度と同じで、絶対湿度の算出は今回も宮城教育大学大気科学研究室のサイトを使って行いました。

サウナの湿度

 

 この結果から、体感の湿度が低いサウナ室でも、実際の水分量である絶対湿度を見ると座面温度との関係で温度・湿度を見た時の位置付けは様々であることが分かります。更にこれらを「湿度のないグループ」「意外と湿度のあるグループ」「湿度高めのグループ」に大別してみました。

サウナと湿度

 

 ジートピア・つぼや・ロスコは「湿度のないグループ」に分類でき、このグループは市販の湿度計では計測結果が0%になってしまう、本当の『高温カラカラサウナ室』と言えます。

 神戸サウナ・ユーランド鶴見・サウナフジ・サンフラワー・ひろいサウナは体感の湿度が低いわりには実際には湿度がある、「意外と湿度のあるグループ」と言えます。フィンランドの論文で快適な湿度帯であるとされる40g/kg~60g/kgに入る施設もあり、湿度は決して低くありません。座面温度についても、体感の熱さに比べるとこんなもんか、という数値になっていて、非常に高温に感じるのは温度だけでなく湿度のためでもあるということがわかります。湿度が低く高温で熱い、と体感していたところも、実は湿度も高いから非常に熱く感じるのでしょう。フィンランド式より温度は高い『高温中湿のサウナ室』という分類でしょうか。

 サウナ錦糸町とアスカは数値から「湿度高めのグループ」と言えますが、これはもはや『高温高湿のサウナ室』と言っても差し支えないでしょう。このセッティングはそれほど多いわけではなく、例外的とも言えます。温度も湿度もどちらも高いからこそ、あの特異な熱さが体感できるのでしょう。また、サウナ錦糸町のロウリュをしていなくても乳首が痛くなる秘密は、この高湿にあるのかもしれません。

 

 日本の高温カラカラのサウナ室 vs 本場フィンランドの湿度が高いサウナ室、という構図で語られることがありますが、湿度が低いサウナ室といってもいろいろあるということがわかりました。湿度が低く熱いと感じていたサウナ室も、実は結構湿度が高く、湿度も体感の熱さに寄与している、という例も少なくなさそうです。逆に湿度が高いサウナ室は、火傷してしまうのでそこまで温度を上げることができないわけです。今回は男性サウナについて、湿度が低いと感じるサウナを選んで考察してみました。女性の場合は男性より高湿が好まれるとされて言われたり、温度が低めであると言われたりすることがありますが、実際はどうなのでしょうか。次回は女性サウナ室のデータを見ていきます。