サウナ室の湿度
サウナ室での身体のあたたまり方や汗のかき方には温度だけでなく湿度も大きく関係していると考えられます。サウナ室の湿度について、私たちはどのように判断しているでしょうか。
例えば、息を吸って鼻の中が痛くなったり汗が出にくいと感じる時、「乾いている(湿度が低い)」と判断し、息苦しかったり汗が出やすいと感じる時、「湿っている(湿度が高い)」と判断している人もいるかもしれません。口を開けてサウナ室内の空気を吸い込んで判断する人もいるかもしれませんし、肌で感じるという人もいるかもしれません。湿度を感じる方法は人それぞれと言えそうです。
実際にそのサウナ室の湿度がどのくらいなのか確かめようにもサウナ室に湿度計が設置されていることは稀で、温度に比べてわかりやすい指標もなく、はっきりとはわかりません。身体のあたたまり方や汗のかき方に大きく関連する要素でありながら、サウナ室の湿度には謎が多いと言えるでしょう。今回からは、そんな湿度の謎に迫ってみたいと思います。
絶対湿度と相対湿度
そもそも「湿度」とは何でしょうか。『ブリタニカ国際大百科事典』では次のように定義されています。
空気が乾いているか湿っているかを示す度合い。絶対湿度と相対湿度があり,絶対湿度は 1㎥中の水蒸気量をグラム単位で表し,相対湿度はある気温で現実に含んでいる水蒸気とその温度で水蒸気を含みうる限度(飽和水蒸気量)との割合を百分率で表したもの。(中略)相対湿度のことを通常は単に湿度という*1
つまり湿度とは、「空気が乾いているか湿ってるかを示す度合」のことで、絶対湿度と相対湿度の2種類の表し方があるということです。この2種類、それぞれどのようなものか整理してみました。
『ブリタニカ国際大百科事典』の「湿度」の定義によると、通常私たちが「湿度」と口にしているのは相対湿度の方ということでした。つまり、その空気が含むことのできる最大の水分量に対して、今何割くらいの水分量が含まれているかの割合を「湿度」と言っているわけです。
湿度の体感は絶対湿度?相対湿度?
私たちが湿度が高い、低いと感じる時、関係しているのは絶対湿度と相対湿度のどちらなのでしょうか。
人間には、空気中の水分を直接感知する器官はないと言われています。近畿大学の岩前篤は「実は私たちヒトの体には、湿度を感じる器官は存在していません」*2と言います。ではどうやって、カラッとしている、じめじめしているという湿度の高低を判断しているのかというと、「皮膚表面に分泌される汗の蒸発具合が、皮膚表面の圧覚あるいは触覚を刺激することで、乾湿感に“翻訳”している」*3と言うのです。汗がすぐに乾くとカラッとした感覚になり、汗がなかなか乾かないとじめじめした感覚になるということです。
冬の寒い日に、空気が乾いているなと感じるのも、直接空気中の水分を感じ取っているのではなく身体の水分が空気中に持っていかれる感覚からそのように感じていると考えられます。例えば、息を吸って空気が乾いていると感じる時、鼻や口の水分が空気中に持っていかれている感覚から空気が乾いていると体感していると考えられるのです。
つまり私たちは、湿度が高い、低いということを体感することはできますが、それは空気中の水分を直接感じているのではなく、汗の蒸発具合や粘膜・皮膚からの水分の持っていかれ方で判断していると考えられるのです。「湿度を感じる器官は存在していません」というのは、直接空気中の水分量を感知する器官があるわけではない、ということです。つまり、湿度の体感は空気中の水分量を表す絶対湿度ではなく、相対湿度で語るのが適切であると言えそうです。
湿度を考える際には、温度との関係も重要です。次回は、温度と湿度の関係について詳しく見ていきます。
参考文献
岩前篤(2017)「湿度を感じる器官って? 乾湿感のウソ【Re Re 快適のヒミツ】」、サンケイリビング新聞社、『LIVING兵庫』、(最終閲覧日:2019年2月13日)
『ブリタニカ国際百科事典 小項目辞典』、(最終閲覧日:2019年2月13日)