「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」では男性サウナ室について、計測した相対湿度の数値と体感の湿度を比較しました。同じ方法で、今回は女性サウナ室の計測結果についてまとめ、体感の湿度と実際の測定値にどのくらいの差があるか見てみたいと思います。
湿度計測の条件
・2018年11月~2019年2月にかけて計測を試みた約50施設のうち、湿度に幅が出ると予想される関東の10施設の女性サウナ室を選定。
・計測位置は原則、サウナ室の最上段の背中から腰の間。
・計測時間は湿度計の針が安定するまでの20~30分程度とし、ロウリュを実施しているもしくはセルフロウリュが出来る施設の場合は、なるべく影響を受けないようにロウリュ後から30分以上あけて計測。
・誤差を少しでも小さくするため、一つの施設につき必ず複数回計測し、その平均値を使用。
・湿度計に故障・不調が見られたら新しいものに変えて再計測。
・利用者が多い時と少ない時とで湿度に大幅に差が出るケースも見受けられたため、入室率が50%を超えた場合は計測結果から除外。
計測対象の10施設
湿度の体感別で施設を高・中・低と3つに分類しました(Saunology管理人の体感による)。
・体感湿度:低
①サウナ&カプセル ロスコ(東京都北区)
②カプセル&スパ レディース510(東京都新宿区)
③ファンタジースパ おふろの国(神奈川県横浜市)
④センチュリオンホテル&スパ上野駅前(東京都台東区)
⑤東京新宿天然温泉テルマー湯(東京都新宿区)
・体感湿度:中
⑥ヨコヤマ・ユーランド鶴見(神奈川県横浜市)
⑦アダムアンドイブ (東京都港区)
・体感湿度:高
⑧ルビーパレス(東京都新宿区)
⑨湯乃泉 草加健康センター(埼玉県草加市)
⑩スカイスパYOKOHAMA(神奈川県横浜市)
計測結果
計測結果をまとめると、以下のようになります。
補足
・「②カプセル&スパレディース510」
計測した日によって数値に少なくない差がありました。一番高い数値の時が27%、一番低い数値の時が8%で、18%の日が複数ありました。サウナ室が狭く、人の出入りによって数値がかなり上下しました。マットもすぐに湿ってしまうため、利用状況によって湿度に少なくない差が出るようです。
・「⑧ルビーパレス」
以前は体感湿度が「中」でしたが、2018年8月末頃からサウナ室がオートロウリュ*1のあるサウナ室にリニューアルしており、計測時もオートロウリュのある状態でした。オートロウリュは約8分に一度で、リニューアル前より体感湿度が上がり、「中」ではなく「高」だと感じました。
・「⑨湯乃泉 草加健康センター」
草加健康センターの11月2日のツイートにもあるように、2018年11月頃から女性サウナ室の温度・湿度が以前と変わり、体感温度が上がり「高」になりました。変更前は1時間に一度、ストーブに水が落ちるオートロウリュのあるサウナ室でした。その一度の水の量は多く、その時は湿度が上がるのですが、1時間に一度だけで、その時間以外は湿度がそれほど「高」いわけではありませんでした。しかし、計測時はオートロウリュは作動せず、以前よりも体感湿度が常時「高」いセッティングになっていました。
・「⑩スカイスパYOKOHAMA」
1時間に一度ロウリュサービスがあるので、極力ロウリュの影響を受けないように、ロウリュ後30分経過した時点から次のロウリュ直前までを計測しましたが、他の施設と大きく差のあるこの数値になりました。ロウリュの影響を受けない時間帯で、かつ複数回計測をして毎回同じくらいの値になりました。
マッピングと考察
これらの計測結果について、各施設が全体の中でどこに位置付けられるかをマッピングし、 体感との差を改めて見てみました。
「⑩スカイスパYOKOHAMA」は計測結果の数値が他と比べて高すぎるので、グラフを中略し、このような形で表記しました。
マッピングした結果を見ると、体感と実際の計測値はおおよその傾向としては近いと言えます。男性サウナ室の場合と同じで、体感が「高」の施設が実測で「低」になることはありませんでしたし、その逆も同様でした。特に、体感で「高」だと思っていたところは、軒並み実測の数値も高い結果になりました。
ただ、体感が「低」だと思っていたところで予想より「高」い数値になったところもあり、この点では体感と計測値に差がありました。体感で「低」と思っていたところと「中」と思っていたところの計測結果は、入り混じるような形になりました。男性側では、湿度が「低」いサウナ室は体感と一致しやすい傾向が見られましたが、女性側では「低」と「中」を体感し分けることは難しかったと言えます。
その理由の一つとして、女性側の方が男性側より相対湿度が全体的に「高」い傾向にあるということが考えられます。男性側には湿度計が0%という値を示すほど湿度の低いサウナ室がありましたが、女性側では0%になる施設は関東にはありませんでした*2。女性側の方が全体的に湿度が「高」めになっており、湿度計が0%を示すほど湿度の「低」いサウナ室は稀なため、体感湿度が「低」いと感じているところも、男性側でいう「低」いより実際の湿度は「高」いのだと思われます。
女性側の方が相対湿度の平均が高く、女性には湿度が「高」い方が好まれると想定されているのかもしれません。このことは、男性側はドライサウナのみ、女性側はスチームサウナやミストサウナのみという施設があっても逆は基本的にないことからもうかがえます。女性側は湿度が「高」い方が好まれると考えられる理由の一つに、発汗に関する男女の体質の差があると考えられます。発汗については、別の記事で詳しくまとめますが、女性は男性と比べて発汗に時間がかかり、発汗量も少ない傾向にあると言われています*3。そのため、湿度が低いカラカラのサウナ室より、ある程度湿度のあるサウナ室が多いのかもしれません。
また、「①カプセル&サウナ ロスコ」・「⑩スカイスパYOKOHAMA」を除くと全体的に近い数値が多く、女性側は男性側と比べて湿度帯のバリエーションが少ないとも言えそうです。湿度に幅が出そうな10施設を選んでもなお、同じくらいの数値になるところが多かったのです。実際に体感でも、それほどバラエティーに富んでいるとは感じず、比較的似通ったセッティングが多いように感じます。
「サウナと湿度 そもそも湿度とは」で見たように、体感湿度の判断は、空気中の水分を直接感知できるわけではないので、発汗の具合や温度などの様々な要素に基づいて行っています。そのため、湿度はそこまで低くないにも関わらず、温度が低いために汗が出にくいというケースを湿度が低い、と体感してしまっていた可能性もあります。
比較的近い数値が多い中で、「⑩スカイスパYOKOHAMA」は他の施設に比べて数値が「高」すぎますが、体感は同じく「高」に分類した「⑨湯乃泉草加センター」などとそれほど差があるとは思えません。体感の湿度は相対湿度と関係がある、ということで相対湿度の数値をもとにマッピングをしましたが、「⑩スカイスパYOKOHAMA」の数値が他と比べて「高」すぎるにも関わらず、体感はそこまで大きな差がないということには温度との関係で考えた絶対湿度も関係してきそうです。直接空気中の水分を感知できるわけではないとはいえ、サウナ室のような高温環境では通常の環境下においてよりも絶対湿度の変化は大きいということは既に確認しました。
今回計測で得られた相対湿度の数値を用いて、今度は温度との関係を考慮して絶対湿度について見ていきます。そのためには、まず温度について考える必要があります。次回は、私たちがサウナ室で座っている位置の温度、座面温度についてまとめます。
参考文献
久野寧(1963)、『汗の話』、光生館