Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

サウナについて調べ、考え、まとめるブログ。知れば知るほど、サウナにはまだまだ謎がある。その謎を解き明かしていくために、サウナについて様々な角度から考察してサウナ理解を深めます。身体で感じるだけでなく、頭で仕組みを考えるとサウナはもっと楽しい。サウナ好きがサウナをもっと知りもっと楽しむために始めたサウナ考察ブログ。 お問合せは下記までどうぞ。 saunology37@gmail.com

サウナと「のぼせ」

 「サウナとやけど」では、サウナを楽しむにあたり気を付けた方がよいことの一つとしてやけどについてまとめました。また、「サウナと湯冷め」では風呂上りに身体が冷えてしまう湯冷めについて見てみました。温泉に入ったあとに体調が悪くなる「湯あたり」なども、入浴に伴う不調の一つです。湯あたりの症状にはいろいろありますが、普通に風呂でのぼせるのと何が違うのでしょうか。今回は、湯あたりと入浴後の「のぼせ」についてまとめてみます。

のぼせ

 
湯あたり

 サウナ浴とは直接関係ありませんが、温泉に入ったことでのぼせたり、頭痛やめまいなど体調に不調を感じると「湯あたりしたかも」と思う人もいるかと思います。湯あたりとは、温泉の成分によって起こる温泉特有の症状のことです。具体的な症状は次のようなものがあげられます。

・熱
・寒気
・頭痛
・腹痛
・下痢
・めまい
・強い倦怠感
・体がだるい
・吐き気、嘔吐 など*1

 また、湯あたりについて、温泉ソムリエのホームページでは次のように説明されています。

湯あたりは、その温泉が体に合わないために体調不良になる場合と、温泉の力で治癒の途中で一時体調不良となる「好転反応」の場合があります。
そのどちらなのかはわかりにくいのですが、湯あたりになったら1日温泉入浴を控えて、体調が戻れば「好転反応」と考えて入浴を再開していいですし、復調しなければその温泉が体に合わないことも考えられますので、その温泉への入浴は控えた方がいいでしょう*2

 温泉の成分が体に合わない場合と、温泉の効果で体調が良くなる途中の「好転反応」の場合があるそうです。身近な温浴施設でも、浴槽の1つが温泉であることもあります。そういうときに、「湯あたりしたかも」と言う人がいますが、1日の入浴で「湯あたり」とは言わないようです。数日にわたり、継続して同じ温泉に入ることで生じるのが湯あたりということです。

湯あたりは温泉に入ったときに起こる特有の症状です。温泉以外のお風呂に入って起こる症状は湯あたりとは言いません。お湯に含まれた温泉成分によって、頭痛、めまい、発熱、嘔吐など、体調不良を起こすことが湯あたりの症状です。

そのため、通常1〜2日程度では湯あたりになることはなく、温泉に入り始めて2〜3日後から1週間のあいだに発症するのが一般的です*3

 温泉部のホームページでも、次のように説明されています。

通常1〜2日程度の温泉入浴では湯あたりになることはなく、温泉に入り始めて2〜3日後から1週間のあいだに発症することが一般的です*4

 つまり、ちょっとした旅行や日帰りの入浴で体調が悪くなっても湯あたりとは言わないわけですね。もともと、湯治のために継続して温泉に入浴する場合に、温泉成分が合わないか、効果が出て身体の不調が治りかけているときの好転反応として体調が悪くなるというのが湯あたりということです。

 好転反応の場合もあるので、湯あたりになったからといって必ずしも入浴をやめる必要はないそうです。温泉ソムリエのホームページでは、湯あたりになったら1日入浴を控えて、体調が戻るようであれば好転反応だったと考えて入浴を再開、体調が戻らなければ温泉が体に合わない可能性もあるのでその温泉への入浴はやめるとよいとしています*5。また、湯あたりになりやすい泉質として「硫黄泉」「酸性泉」「放射能泉」があげられており、「単純温泉」は湯あたりしにくいことも指摘されています*6。ちなみに「単純温泉」とは含有成分の量が一定量に達していない温泉のことだそうです*7

湯あたり

(画像出典:Yutty!【ユッティ】温泉に行きたくなるメディア)

 

 日本の温泉による湯治の歴史は長いですが、飲むなどして身体の中に入れるわけでなくても、温泉の成分によって治療の効果があったり、身体に合わずに不調を引き起こしたりするわけです。そう考えると、水風呂の場合も水質によって心地よさや冷え方の体感が変わるのも不思議ではない気がしてきます。

 サウナ好きでも、温泉も楽しむという人はいると思いますが、短時間の入浴や日帰り入浴の場合の体調不良は湯あたりではなく単純な「のぼせ」だと考えられます。では「のぼせ」はどういう仕組みで起こるのでしょうか。

 

のぼせ

 温泉に長期的に入ることで引き起こされる体調の不調とは別に、普段の入浴・サウナ浴でもくらくらしたり、頭痛がしたり、めまいがしたりすることはあります。こうした状況を風呂でのぼせた、と言ったりします。「のぼせ」とは何なのかということについては、次のように説明されています。

長時間入浴したり熱いお湯に入ったりしたときなどに、顔がほてったり、頭がくらくらするなど、気分が悪くなる症状がのぼせです。体が温まって、血管が拡張し、血流が増加して起こります*8

 のぼせる原因は、血圧の急激な変化です。のぼせる仕組みは次のように説明されています。

特に冬場など、寒い脱衣所で衣服を脱ぐと、血管が縮んで血圧が上がります。そこから急に熱い湯船に浸かると、交感神経が刺激され、水の圧力も加わってさらに血圧が上昇します。ところが、次第に体全体が温まってくると、今度は血管が広がって血圧が下がっていきます。そして最後に湯船から出ると、水の圧力もなくなって血液が下半身に滞り、血圧はさらに下がります。これによって脳に十分な血液が行き渡らなくなり、立ちくらみのように感じ、いわゆるのぼせた状態になってしまうのです*9

 つまり、血圧の変化によって脳に十分な血液が行き渡らなくなることで、ふらふらしてしまったりするということです。湯舟に浸かる入浴ではなくサウナ浴でも、立ち眩みを経験したことがある人はいるのではないでしょうか。ちょっと普段より長く入ってしまったりすると、水風呂に入ってからでも立ち眩みがすることがあります。

 サウナ室で体温が上がると、身体は熱を逃がすために血管を広げるので血圧が下がります。水風呂に入ると、身体の表面が冷えて、今度は熱を逃がさないために血管を締めるわけですが、身体の中はまだ熱いので血液を身体の表面に送ろうとする動きと、血管を締める動きが同時に起こり、身体に斑模様のいわゆる「あまみ」が出るのでした。

あまみ

 

 のぼせないようにするには、サウナ室に長く入りすぎないこと、水風呂にざっと入るだけではなく休憩などで身体をゆっくり冷やして脳に血が行き渡るようにすることが重要といえそうです。のぼせを防止するために、頭を冷やして入浴するのがよいということも指摘されています*10。濡らしたタオルを巻くことなどが効果的であるとされています。頭を冷やしておくことで、体温が上昇しすぎるのを防ぐことができ、結果的にのぼせ防止になるそうです。サウナハットものぼせ防止の役割があると言われていますが、頭が温まりすぎないようにできるからということですね。

サウナハット

(画像出典:YOUちゃんねる)

 

 また、血液が身体の下の方に滞ってしまうことものぼせの原因なので、のぼせてしまった場合、足の位置を高くして横になるとよいとも言われています*11。ちょっと温まりすぎたかなと思うときには、横になって休憩するのも効果的と言えそうです。

 

サウナと休憩

 サウナと水風呂だけでも温冷交代浴はできますし、人によっては休憩をあまりしないでサウナに入る人もいるでしょう。サウナ・水風呂・外気浴とセットで語られることも増えましたが、浴室に椅子がない場合などは休憩せずにサウナと水風呂を繰り返すこともあります。

 「ととのう」という表現も流行しているように思いますが、「ととのう」ということを考えなくても水風呂のあとの休憩は結構重要であることがわかります。「サウナと湯冷め」で見たように、水風呂に入るだけでは体温が上がったままで、引き続き発汗してしまって湯冷めすることも可能性もあり、休憩が重要なことがわかりました。

 のぼせについても、少し水風呂で表面を冷やしてはサウナ室に入る、という形だとのぼせやすいように思います。入浴関係の不調の仕組みを見てみると、サウナ、水風呂のあとに休憩することで、体温を落ち着かせることが重要であることがわかります。

 海外のサウナの入り方を見てみても、やはり休憩の工程が含まれていることが多いです。「海外のサウナの入り方」でも取り上げましたが、サウナ後の休憩は海外でもポイントのようです。

 例えばこれはポーランド語のサイトの「ETAPY KĄPIELI I ZASADY KORZYSTANIA Z SAUNY」(サウナを使用するための入浴手順とルール)という記事の中のイラストです。

サウナ 入り方

(画像出典:"ETAPY KĄPIELI I ZASADY KORZYSTANIA Z SAUNY")

 横になって休憩しているイラストがあります。また、Saunahaus,COMというサイトで販売されている、英語、ドイツ語、フランス語の3か国語で書かれたパネルでも、やはりしっかり休憩しています。

サウナ 入り方

(画像出典:Saunahaus,COM)

 その他のビジュアル資料を見ても、横になって休憩しているイラストが多いです。「海外のサウナの入り方」では他の例も紹介しているので、よろしければご覧ください。横になって休憩すると血が身体をめぐるのが感じられ、心地よいですが、入浴に伴う不調を避けるためにも横になっての休憩は重要であるといえそうです。

 

 今回は、湯あたりとのぼせについてまとめてみました。入浴に伴う不調の原因や仕組みがわかっていると、不調を避けて楽しむことができそうですね。

 

 

参考文献・資料

livedoorNWES「お風呂でのぼせるメカニズムとその対処法」2015年8月2日(最終アクセス日:2021年4月9日)

pomysłnadom, "ETAPY KĄPIELI I ZASADY KORZYSTANIA Z SAUNY"(最終アクセス日:2021年4月9日)

Saunahaus,COM(最終アクセス日:2021年4月9日)

温泉ソムリエ「第2章『入浴の注意事項その2~湯あたり』」(最終アクセス日:2021年4月9日)

温泉部「湯あたりとは?原因・症状・3つの対処法をご紹介!のぼせとの違いは?」2017年8月8日、(最終アクセス日:2021年4月9日)

たびこふれ「のぼせ、湯あたり、湯疲れの違いとは? 原因や対処法についても解説」2020年9月24日(最終アクセス日:2021年4月9日)

ニッポン放送NEWS ONLINE「お風呂で“のぼせる”って、どういう状態? 医師が回答」2020年12月1日(最終アクセス日:2021年4月9日)

 

*1:温泉部HP

*2:温泉ソムリエHP

*3:たびこふれHP

*4:温泉部HP

*5:温泉ソムリエHP

*6:同上

*7:同上

*8:たびこふれHP

*9:ニッポン放送NEWS ONLINE

*10:たびこふれHP

*11:livedoorNEWS