Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

サウナについて調べ、考え、まとめるブログ。知れば知るほど、サウナにはまだまだ謎がある。その謎を解き明かしていくために、サウナについて様々な角度から考察してサウナ理解を深めます。身体で感じるだけでなく、頭で仕組みを考えるとサウナはもっと楽しい。サウナ好きがサウナをもっと知りもっと楽しむために始めたサウナ考察ブログ。 お問合せは下記までどうぞ。 saunology37@gmail.com

湯乃泉グループ3店舗のサウナ室

 「熱源が複数種類のサウナ室」では、複数の種類のヒーターを置いているサウナ室として草加健康センターの男性側と、相模健康センターの男性側を紹介しましたが、その相模健康センターは2021年1月に惜しまれつつ閉店しました。どの店舗もファンの多い湯乃泉グループの3店舗、相模健康センター・草加健康センター・東名厚木健康センターですが、それぞれサウナ室には違った特徴があります。今回は、お店の許可をいただいて、湯乃泉グループの3店舗のサウナ室について、温度・湿度・ヒーターの種類などからその特徴をまとめていきます。

 

相模健康センター

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(画像出典:相模健康センターHP)

 

 神奈川県座間市の相模健康センターは、2021年1月17日をもって惜しまれつつ閉店しました。閉店直前には連日多くのサウナ好きが訪問していたことがSNSなどでわかります。相模健康センターはコンパクトで過ごしやすい施設でした。サウナ室にはどのような特徴があるでしょうか。男性側、女性側それぞれデータを見ていきます。

 

【男性側】

相模健康センター

(画像出典:草加健康センター様よりご提供)

 

計測日:2019年8月

表示温度:97℃

座面温度:87℃

相対湿度:10%

絶対湿度:37.7g/㎥

ヒーター:ストーン対流式 1台・遠赤外線ヒーター 2台 計3台

段数:4段

 男性側のサウナ室は時期やタイミングによって体感の熱さに変化を感じたりもしましたが、上記の温度と湿度はともに2019年8月に計測した値です。湿度は3店舗の中では一番低く、座面温度の87℃が示すようにその熱さが最大の特徴で、種類の異なるヒーター計3台による凝縮された熱の重厚感が唯一無二のサウナ室でした。

 

【女性側】

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(画像出典:YouTube湯乃泉チャンネル動画より)


計測日:2021年1月

表示温度:86℃

座面温度:61℃

相対湿度:38%

絶対湿度:51.4g/㎥

ヒーター:ストーン対流式 1台

 段数:2段

 女性側のサウナ室はストーン対流式1つ、2段のサウナ室でした。体感でも湿度が高く、発汗しやすいサウナ室です。絶対湿度も51.4g/㎥とやはり高めで、温度はそれほど高いとは言えませんが、湿度が高いため体感は熱いサウナ室となっています。

 

草加健康センター

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(画像出典:草加健康センターTwitterアカウント)

 

 埼玉県草加市の草加健康センターは、サウナ室・水風呂が露天スペースにまとまっており、サウナ好きにとっては動線の良いつくりになっています。サウナナイトなど、サウナ好き向けのイベントも積極的に開催していて、ファンの多い施設です。サウナ室にはどのような特徴があるでしょうか。

 

【男性側】

草加健康センター

(画像出典:草加健康センター様よりご提供)

 

計測日:2018年11月~12月

表示温度:92℃

座面温度:92℃

相対湿度:15%

絶対湿度:67.2g/㎥

ヒーター:ストーン対流式 1台・遠赤外線ヒーター 1台 計2台

段数:3段

 男性側のサウナ室は座面温度だけではなく湿度も高いのが特徴で、体感の熱さでは湯乃泉グループで一番ではないでしょうか。仮に爆風ロウリュがないとしても、長く居続けることが難しいサウナ室です。前回の「熱源が複数種類のサウナ室」で書いたように、こちらも相模健康センターと同じく、種類の異なるヒーターによる種類の異なる熱の厚みを楽しむことができます。

 

【女性側】

草加健康センター

(画像出典:草加健康センター様よりご提供)

 

計測日:2018年11月~12月

表示温度:86℃

座面温度:84℃

相対湿度:19%

絶対湿度:63.9g/㎥

ヒーター:イズネス 1台

段数:4段

 女性側のサウナ室はmetosのイズネスというヒーター1台です。かつては滝のように水が落ちるオートロウリュが有名でしたが、現在はオートロウリュではなく、常時高温・高湿のセッティングになっています。オートロウリュの一瞬の狂暴な熱さも刺激的ですが、常にしっかり熱がこもっていて熱いサウナ室は女性側では特に貴重です。段数も4段と多く、熱いのが好きな人は上段へ、苦手な人は下段へと選択肢が多いです。実際に0段目に座っている人も多く、サウナ好きが満足するくらいしっかり熱くしても多くの人が楽しめる設計になっています。

 

東名厚木健康センター

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(画像出典:東名厚木健康センターTwitterアカウント)


 神奈川県厚木市にある東名厚木健康センターは高速道路をおりてすぐという立地にあり、車で長距離移動をするときにはつい寄りたくなるお店です。2021年3月にはテントサウナ「RAKKO PARK」など新しい取り組みも始まり、ますます注目されている施設です。サウナ室にはどういう特徴があるでしょうか。

 

【男性側】

東名厚木健康センター

(画像出典:草加健康センター様よりご提供)


計測日:2021年3月

表示温度:86℃

座面温度:84℃

相対湿度:12%

絶対湿度:40.4g/㎥

ヒーター:ストーン対流式 1台

段数:4段

 男性側のサウナ室はストーン対流式のヒーターが1台です。対流熱がメインで麦飯石効果も相まってか、熱に包まれて身体が温まるサウナ室です。他の2店舗よりもじっくりじんわり、かつしっかり温まるような体感を楽しめるバランスが素晴らしいです。(バイブラ無しの水風呂も大好きです)。

 

【女性側】

東名厚木健康センター

(画像出典:草加健康センター様よりご提供)

 

計測日:2021年3月

表示温度:98℃

座面温度:85℃

相対湿度:12%

絶対湿度:41.9g/㎥

ヒーター:ストーン対流式 1台

段数:2段

 女性側も、ストーン対流式のヒーターが1台です。段数は男性側より少ない2段ですが、座面の温度も絶対湿度も男性側とほとんど同じ数値で、男性側とセッティングが変わらないと言えそうです。対流式のヒーターにはストーンの上に水の入った石のボウルが3つ置いてあり、湿度に寄与しているのかなと思いました。

 

3店舗のサウナ室を数値で比較

 施設によって三者三様、かつ男女でもサウナ室に違いがある湯乃泉グループ3店舗ですが、その「違い」はどのようなところにあるでしょうか。今度は数値をもとに、3店舗の温度・湿度を比較してみます。まずは男性側から比較してみましょう。

 

【男性側サウナ室の数値】湯の泉グループ

 座面の温度・湿度ともに最も高いのが草加健康センターです。体感も一番熱く、長くは入っていられないサウナ室ですが、数値を比較してもやはり一番高温・高湿だということがわかります。座面の温度が二番目に高いのは相模健康センターですが、湿度を比較すると一番低い値になっており、3店舗の中では比較的、高温低湿と言えます。複数の種類のヒーターを使っている草加健康センター・相模健康センターはやはり熱いサウナ室となっています。東名厚木健康センターは座面の温度を見ると3店舗の中で一番低い値になっていますが、湿度は比較的高め、バランスの良いサウナ室と言えます。じっくり心地良く温まることができるのは、温度・湿度共に高すぎず、低くもない絶妙なバランスだからでしょう。

 

【男性側サウナ室のマッピング】

 3店舗のセッティングを座面温度と絶対湿度の数値でマッピングすると、次のようになります。湯の泉グループ

 

 絶対湿度の40g/㎥~60g/㎥に「快適とされている湿度帯」として色をつけているのは、フィンランドのサウナ室で理想的であるとされている湿度帯がこの値だからでした。「サウナと湿度 絶対湿度の算出~男性サウナ室~」などで見たように、Niilo Teeriの"The Climatic Conditions of the Sauna"ではフィンランドのサウナ室の絶対湿度について、40g/kg~60g/kgが理想的であるとされていました*1。もちろん温度との関係などもありますが、参考に今回もこの範囲には色をつけています。

 マッピングしてみると、草加健康センターはやはり高温高湿、相模健康センターは比較的、高温低湿、東名厚木健康センターがその間に位置しているということがわかります。

 

【男性側の他の施設も含めたマッピング】

 湯乃泉グループの3店舗が、他の施設と比べるとどのような位置にくるのか、他の施設も含めてマッピングしてみました。湯の泉グループ

 こうして見ると、草加健康センターがかなり高温高湿であることがわかります。この位置にくるサウナ室は多くないでしょう。3店舗の中では最も低湿だった相模健康センターも、こうして他の施設も含めてマッピングしてみると湿度・温度ともに高めということがわかります。

 

【女性側サウナ室の数値】

 同じように、女性側も数値を比較してみました。まずは3店舗の比較です。

湯の泉グループ

 座面の温度は、草加健康センターと東名厚木健康センターがほとんど同じですが、草加健康センターは湿度が非常に高いので、体感は3店舗の中で最も熱いです。相模健康センターは、座面の温度が61℃と他の2店舗に比べて低いですが、湿度が高いので体感は熱く発汗しやすいサウナ室でした。草加健康センター・相模健康センターの数値が男性側の数値と異なるのに対して、東名厚木健康センターはほとんど男性側と変わらない温度・湿度だということがわかります。温度も高く、湿度も高めなのでしっかり温まることができます。

 

【女性側サウナ室のマッピング】

 女性側も、3店舗を座面温度・絶対湿度の数値でマッピングしてみました。湯の泉グループ

 草加健康センターが圧倒的に高温高湿であることがわかります。男性側と比べると、女性側の方が全体的に温度は低いものの湿度は高い傾向にあります。男性側のように、複数の種類のヒーターがあるわけではなく、ヒーター1台のサウナ室なので、熱の強さはやはり男性側とは違いそうです。その分、湿度が高いので、体感は熱く汗もしっかりかくことができるサウナ室と言えます。

 

【女性側の他の施設も含めたマッピング】

 女性側も、他の施設を含めてマッピングしてみました。湯の泉グループ

 女性側もやはり草加健康センターの高温高湿が目に留まります。相模健康センターは、他の施設と比べても温度は比較的低めですが、湿度は他と比べても高いことがわかります。どばっと汗が出るのはこの湿度のためだったのですね。東名厚木健康センターも温度・湿度共に高く、女性側では貴重なサウナ室と言えます。草加健康センターの圧倒的な高温・高湿具合に比べて、東名厚木健康センターは女性側も男性側と同様、多くの人にとって入りやすいサウナ室といえそうです。じっくりしっかり温まることができる心地良いサウナ室です。

 

【湯乃泉グループ男女サウナ室のマッピング】

 最後に、湯乃泉グループ3店舗の男女両方のサウナ室を座面温度と絶対湿度でマッピングしてみました。湯の泉グループ

 こうしてみると、草加健康センターと東名厚木健康センターは男女のセッティングが比較的近いのに対して、相模健康センターはかなり特徴が違ったことがわかります。相模健康センターの男性側は高温で比較的低湿、逆に女性側は温度は低めで湿度は高めだったということで、男女でかなり違うサウナ室だったと言えます。東名厚木健康センターは、一番男女のセッティングが近いですね。草加健康センターは、特徴は同じで男性側が女性側よりさらに温度も湿度も高い、ということになります。女性側も十分熱いですが、やはり男性側に入るとびっくりするのは、この違いのためなのですね。

 

 今回は湯乃泉グループの3店舗、相模健康センター、草加健康センター、東名厚木健康センターのサウナ室について詳しく見てみました。三者三様で、男女でもサウナ室が違いますが、どれもクオリティの高いサウナ室であることが体感だけでなく数値からもわかり、ファンが多いのも納得です。サウナ好きとして、相模健康センターの閉店はとても残念で、施設全体はもちろん、このようにサウナ室もそれぞれ違うからこそ、もうあのサウナ室には入れないと思うと残念です。しかしその分、残りの2店舗の、これまたそれぞれ違う熱と湿度のバランス、それぞれの熱さを楽しんでいきたいと思います。

 

参考文献

Teeri, Niilo. (1976) "The Climatic Conditions of the Sauna", Teir, H., Collan, Y. and Valtakari, P., Sauna Studies. Ⅵ International Sauna Congress, Helsinki, August 15-17, 1974. pp.113-120.

*1:Teeri, p.115