サウナが好きな人は広告やCMにサウナが出てくるとつい見入ってしまう人が多いのではないでしょうか。最近ではバイクの「トリシティ」、飲料の「果実とミルク」、ゼスプリ・キウイのCMなどにサウナが登場しました。しかし、家庭用サウナなど、サウナそのものの広告やサウナ施設・温浴施設の広告はあまり見かけないように思います。今回は、サウナに関する昔の広告やCMを紹介します。
過去のサウナブーム
「サウナイキタイアドベントカレンダー2019」に投稿した「サウナの今までとこれから」で見たように、1960年代~1970年代にも日本には「サウナブーム」がありました。
また、「『サウナブームを文化に』を問う」でも、日本サウナ・スパ協会技術顧・METOSの前身「中山産業」の元取締役の中山眞喜男のインタビューなどから、1970年代には「空前のサウナブーム」があったことを確認しました。
「広告は時代を映す鏡」などと言われますが、サウナや温浴施設の広告にはどのようなものがあったのでしょうか。
新聞広告
新聞には1950年代から、サウナの広告が見られます。例えば、1956年の『読売新聞』には次のような広告が載っています。
(画像出典:『読売新聞』1956年8月15日、夕刊)
湿式乾式併用のフランス式蒸し風呂、どんなサウナだったか気になります。場所や電話番号も記載されています。
こちらも『読売新聞』の広告ですが、1957年には銀座の「東京温泉」の広告が掲載されています。
(画像出典:『読売新聞』1957年3月13日、夕刊)
「『サウナブームを文化に』を問う」で紹介した中山眞喜男のインタビューでは、東京温泉について次のように書かれていました。
日本最初のサウナの話というと、銀座の東京温泉の話がよくでてきますよね。この施設のできたのが昭和26年。ただこの時はサウナはありませんでした。
で、昭和36年に東京温泉が日本で最初のサウナと言われてるサウナを作ったんですけど、作る時にサウナがどういうものか? っていうのを、まぁ社長自身よく知らなかったんですね*1。
中山によると、東京温泉にサウナができたのは昭和36年(1961年)とのことですが、1957年の広告に既に「フィンランド式サウナ風呂」という文言が見られます。中山によると、東京温泉ができたのは昭和26年(1951年)とのことなので、1961年よりも前に、サウナもできていたのかもしれません。サウナができた年はともかく、中山は東京温泉のサウナについて次のようにも述べています。
それでまぁ工夫して作ってみたんですけど、サウナ室の壁や床に蒸気配管を張りめぐらせて、そこに蒸気を通して部屋を暖めたという。
日本独自のサウナなんですけど、フィンランドのサウナとはまったく違う、でもそれをサウナって呼んじゃったんですね。
温度自体は80度くらいだったと思うんですが、床にも蒸気の配管通してますからね、もう床が熱くってね。飛んで歩かないと入れないようなサウナといいますか、まぁ独自のサウナでしたね*2。
広告では「フィンランド式サウナ風呂」と書いてありますが、実態は「サウナ」と呼べないものだったようです。しかし、「むし風呂の革命!」というこの広告は魅力的です。
中山はMETOSの前身、中山産業の元取締役ですが、1960年代になるとメトスの広告も新聞に出てきます。こちらも『読売新聞』の例で、1966年のものです。
(画像出典:『読売新聞』1966年3月26日、朝刊)
「香花石を使う本場のサウナ風呂」、かなり本格的になってきたことがうかがえます。施設ではなくサウナのメーカーの広告も1960年代には出てくるわけですね。
テレビCM
サウナの広告にはテレビコマーシャルもいろいろあったようです。ここからは、古いCMを紹介していきます。1980年代のものが中心です。
こちらはスチーム&サウナ美松のCMです。
スチーム個室のCMで、個室もなかなか興味深いですが、その前のサウナのシーンでみんなサウナパンツを履いているのも関西らしいです。
こちらはサウナニューエデンのCMです。
動画の2つ目のCMがサウナニューエデンのCMです。オールナイト営業中とのことで、24時間営業の施設だったようです。男性サウナ室で人が横になっているのはなんとなく新鮮です。
こちらはカプセル&サウナフジのCMです。
こちらはサウナジャンボのCMです。
「森林浴サウナ」の文字が気になります。入浴料1500円は当時としても安いのでしょうね。「男のロマンをジャンボにおさめて」とあるように、やはり男性向けです。
別施設で、こんなテンションの高いCMもありました。
「男性オールナイト」というキャッチフレーズ、やはりこれも男性向けですね。
こちらはサウナレジャックのCMです。
「やすらぎサロン」という文字とピアノのメロディー、にぎやかなCMが多い中、こちらは「癒し」を強調するCMです。レジャック4階にあるとのことですが、レジャック4階といえばサウナ&カプセルホテル ウェルビー名駅店があるところですね。
ニュージャパンのCMもありました。
こちらの動画の4つ目がニュージャパンのCMです。1月3日正午からやっているという、お正月用CMですね。レディスは午前10時からとちょっと早めにオープンです。
こちらもニュージャパンのCMです。
この動画の 2つ目がニュージャパンのCMです。「90℃以上のサウナで火傷をしないのは、汗が気化熱を奪うからです」という説明と共に、「サウナでしっかりカロリー消費」と「健康」面がアピールされています。
ニュージャパンのCMには吉村作治バージョンもありました。
「サウナに夢中!」の文字が良いです。
大東洋のCMもありました。
天然温泉であることがアピールされています。レディスへの言及もあります。
こちらはアムザ1000、大東洋レディスサウナのCMです。
アムザの方は「疲れも抜けるお酒も抜ける」という歌が印象的です。こちらは「女の人は泊まれません」と残念な記載がありますが、次の大東洋レディスサウナはリフレッシュオープン、オールナイト営業と女性にも明るい話題です。
施設のCMだけでなく、メーカーのCMもありました。こちらはサニーペットのCMです。
宮尾 すすむのサウナインタビューという形で家庭用サウナが紹介されています。
今回は、古いサウナの広告を見てみました。昔は新聞やテレビCMにもたくさんサウナが登場していたことがわかります。今は温浴施設や、サウナメーカーのCMを見かけることはほとんどありません。もちろん、広告の媒体自体が変わり、SNSなどでの発信の役割も大きい今、テレビCMや新聞広告で取り上げられるもの自体、変わってきているというところはあるでしょう。それにしても、生き生きしたサウナのCMを見ると、この1970年代~80年代はサウナの人気があり、サウナ利用が活発だったのだろうということがうかがえます。「広告は時代を映す鏡」、数十年前のサウナは元気で明るかったようです。やはりサウナは当時から人気があったのですね。
参考文献・資料
SAUNNERS「日本のサウナ誕生秘話、そしてサウナの知られざる裏話。日本サウナ界最強の泰斗・中山眞喜男氏 降臨!」、2018年5月16日
『読売新聞』1956年8月15日、夕刊
『読売新聞』1957年3月13日、夕刊
『読売新聞』1966年3月26日、朝刊