Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

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サウナと入れ墨・タトゥー②

 「サウナと入れ墨・タトゥー①」では、日本における入れ墨・タトゥーについて考えてみました。観光庁が対策を考えていることなども紹介しましたが、海外から日本にやってくる旅行者たちは、日本の「入れ墨・タトゥー禁止」についてどう考えているのでしょうか。今回は、日本の「入れ墨・タトゥー禁止」についての海外の記事を紹介します。

 

日本におけるタトゥーの印象

 旅行者向けに、日本ではタトゥーの印象がよくない、ということを説明している記事はいろいろ見かけます。例えば、Rob Dyerの"Onsen Tips For Those With Tattoos"では次のように言われています。

Whilst tattoos in Japan are synonymous with the Yakuza (gangsters/mafia), the Japanese are unlikely to think that non-Japanese who have tattoos are members of the Yakuza!
That said, because of the association, if you have tattoos in Japan it can affect where you are welcome and what you can do.
This most often crops up at onsen where, since you have to get naked to partake, any tattoos are likely to be seen by other bathers - and here lies a risk that you might offend other Japanese bathers - which won't go well with the owners of the establishment*1.

(日本においてはタトゥーはヤクザ(ギャング/マフィア)と同義と考えられてしまいますが、日本人が日本人以外でタトゥーが入っている人をヤクザだと思うことはありません!

とはいえ、そうした連想があるため、タトゥーを入れている場合、日本では歓迎される場所、できることに影響が出ます。

これは、主に温泉で問題になります。裸になって入浴しなければならないので、他の入浴者にタトゥーを見られてしまうからです。施設の所有者はこれを快く思いません。)

 自分たちを見てやくざだ!と思うわけではないけれど、それでも日本ではタトゥーについてネガティブな連想があり、タトゥーが入っていると日本では行けない場所、できないこともあるということが紹介されています。

 Martha J. Knaufの"Ink and Onsen: How to Enjoy Hot Springs If You Have Tattoos"では、温泉とタトゥーについて次のように言及されています。

A unique and compelling aspect of traveling throughout Japan is sampling the various onsen (hot springs) and sento (community bathhouses) available.(中略)Another restriction, unofficial yet still regularly enforced, is against customers with tattoos*2.

.(日本の旅行において、ユニークで魅力的な側面は入ることのできるいろいろな温泉と銭湯をめぐることです。(中略)もう一つの制限は、非公式でありながら強いられる、タトゥーを入れている客に対する扱いです。)

 「温泉」と「銭湯」は同じようなものを指すけれど、「温泉」と名乗ることができるかどうかは成分によって決められている、ということを指摘して、もう一つの制限としてタトゥーを入れていると利用できない場合が多いことに言及しています。

 Knaufは日本でタトゥーが受け入れられることの難しさについても指摘します。

It’s been difficult for Japan to shed the connection between tattoos and illegal activity.This prejudice is most clear in public bathing facilities, where tattoos are generally still forbidden, although there is no official ban on them. Even foreign tourists, who are clearly not involved in Japanese organized crime, can be turned away for their tattoos*3

(日本ではタトゥーと犯罪・違法行為とを切り離すことはずっと困難な状況です。この偏見は、公式には禁止されていないにも関わらず基本的にタトゥーが禁止されている公衆浴場で最も明らかになります。)

 「入れ墨・タトゥー禁止」が公式なものではないけれど、基本的に日本ではだめなものなのだということが紹介されています。温泉や銭湯は日本旅行の魅力的なコンテンツであるにも関わらず、タトゥーが入っていると入れないことが多い、ということが文化的な背景と共に紹介されているのです。

 

タトゥーありで温泉を楽しむ方法

  明らかに日本の犯罪と関係がない旅行者であっても、温浴施設でタトゥーは許容されない、ということを紹介しながら、両者共にどうしたら日本の温浴施設や旅館・ホテルの浴場を楽しめるか、その方法についても言及しています。

 まずDyerは"I recommend contacting onsen in advance"*4(事前に温泉にコンタクトをとることをお勧めします)と言います。タトゥーがある、ということを訪問したい施設に事前に連絡して相談してみると良いと言うのです。

Some may simply decline. That's their choice. Others, however, will take a different view and will accept you - with no more comment or question*5.

(単純に拒否される場合もあります。それは先方の判断です。しかし一方で、別の見方をして、それ以上質問やコメントなしにあなたを受け入れてくれるところもあります。)

  とりあえず聞いてみれば可能性はある場合もある、という感じです。事前に聞いてみると良いというのはKnaufも書いていて、その際に使える日本語も紹介しています。

“Tatuu wa daijobu desu ka?” (“Are tattoos OK?”)
“Totemo chiisai tatuu ga arimasu. Daijobu desu ka?” (“I have a very small tattoo. Is it OK?”)
“Ookii tatuu ga arimasu. Daijobu desu ka?” (“I have a large tattoo. Is it OK?”)
“Tatuu no haitta gaikokujin desuga, onsen ni hairemasu ka?” (“I’m a foreigner with a tattoo, can I use your onsen?”)*6 

 「とても小さいタトゥーがあります。大丈夫ですか?」や「タトゥーの入った外国人ですが」など、実用的な例文が紹介されています。この例文を覚えて問い合わせてくれた外国人観光客であれば、入れてあげてほしいという気持ちになってしまいます。

 Dyerは他にも、次のようなことを提案しています。

・混んでいる時間や曜日を避ける

・貸し切り風呂があるところであればそれを予約する

・シールで隠す(隠せばOKな施設もある)

 貸し切り風呂を利用する、混んでいる時間や曜日を避けるという点はKnaufも言及しています。

 両者に共通するのは、あくまで公式ではないルールであり、店にもよるため、とりあえず聞いてみるというのが良い、というところです。意外と許可してくれるところもあるよ、という感じです。一方、他の客の目を気にせずに済む貸し切り風呂を検討するということも両者共に勧めています。湯風呂は貸し切りも比較的多いですが、サウナはなかなか貸し切りで利用できないのが残念ですね。

 そして、日本の「入れ墨・タトゥー禁止」について、両者は共通して明るい未来が予想されると書いています。それは、ラグビーワールドカップとオリンピックの開催があり、国として日本が「入れ墨・タトゥー禁止」について検討し始めているからだと言います。Dyerは「サウナと入れ墨・タトゥー①」で紹介した観光庁の取り組みを紹介し、"I think this encouragement will slowly change the policy at individual onsen, or hotel chains who will take a more welcoming view."*7(この動きによって、温泉やチェーンのホテルのポリシーはゆっくり、歓迎の方向に変わっていくでしょう)。

 更にKnaufは実際日本の対応が変わり始めていることを指摘します。 

Our tattooed staff here at GaijinPot have reported seeing an increasing number of hotels and ryokan in major tourist destinations amend their policies. It’s a promising sign that the tattoo taboo won’t, and simply can’t, last*8..

(我々GaijinPotのタトゥーの入ったスタッフが、主要な観光地のホテルや旅館がポリシーを変えているということを報告しています。これは、タトゥーに関するタブーが続かない、続き得ないということを示す兆候です。)

 実際に、日本のホテルや旅館の対応が変わってきているというのです。

 また、タトゥーフレンドリー、つまりタトゥーがあっても歓迎してくれる施設をまとめている記事もありました。例えば、”the 30 Tattoo Friendly Onsen in Japan article”というGaijinPodの記事があります。タトゥーが入っていても問題なく楽しめる施設30選が紹介されています。

 

外国人観光客とサウナ

   日本の観光、特に温浴施設を楽しみたい場合はネックになるタトゥーですが、世界ではますますタトゥーが流行していると言います。アメリカの世論調査会社ハリス・インタラクティブの2012年2月の調査によると、アメリカ国民の21%がタトゥーを入れているそうです*9。30~39歳では、38%にもなると言います*10。また、フランスの世論研究所(Ifop)の調査では、フランス人の10人に1人がタトゥーを入れているということがわかったそうです*11。18歳~24歳に関しては、4人に1人の割合でタトゥーを入れているそうです*12。他にもさまざまな調査結果が出ていますが、山本芳美は「欧米で流行していることが明らか」*13だと言います。

 今回紹介した記事では、海外からの旅行者にとって温泉・銭湯が日本の旅行の魅力的なコンテンツであるとされていました。湯風呂もそうですが、サウナも日本のサウナは欧米のものとはまた違う特徴があり、サウナ好きとしては日本のサウナ・水風呂を体験してもらいたい気持ちもあります。ちょっと手間ですが、「タトゥーの入った外国人ですが」と問い合わせて、訪問してもらえると良いなと思います。温泉だけでなく、タトゥーフレンドリーなサウナ施設を紹介する記事などを英語でまとめたら、より多くの観光客が日本のサウナを楽しめるのかな、などと思ったりもします。

 

 今回は、日本の「入れ墨・タトゥー禁止」について海外からはどのように見られているのか、どんな対処法が考えられているのかについてまとめました。タトゥーフレンドリーなサウナ施設選、作りたくなりました。海外からの旅行者にも、日本のサウナ・水風呂を楽しんでもらえる機会が増えると良いです。

 

参考文献

Dyer, Rob. "Onsen Tips For Those With Tattoos"Articles, Culture, Ryokan & Onsen.

GaijinPod Travel. "30 Tattoo-Friendly Onsen in Japan".

Knauf, J. Martha (2020). "Ink and Onsen: How to Enjoy Hot Springs If You Have Tattoos", GaijinPodBlog.

山本芳美(2016)『イレズミと日本人』、平凡社

 

*1:Dyer

*2:Knauf

*3:同上

*4:Dyer

*5:同上

*6:Knauf

*7:Dyer

*8:Knauf

*9:山本、p.126

*10:同上

*11:同上

*12:同上

*13:同上、p.127