「海外のサウナの入り方」では、英語やドイツ語、ポーランド語などで書かれたサウナの入り方やポイントについて、イラストがあるものを中心に見てみました。蒸気浴の本場と言えばフィンランドと言われがちですが、ロシアのバーニャも世界の代表的な蒸気浴の一つです。今回はロシア語でバーニャやサウナについて書かれているものを紹介します。
ロシアのバーニャ
ロシアのバーニャはフィンランドのサウナと並んで日本でも有名です。しかし、ロシア語の「ванна」(バーニャ)は特定の蒸し風呂を指すのではなく、「風呂」自体を表す単語です。
例えば、「Женский журнал Story-Woman.ru」(女性誌Story-Woman.ru)の記事「Польза и вред бани для здоровья мужчин и женщин」(健康のための入浴の利点と危険性)に記載されたこのイラストには、日本の湯風呂が「日本のバーニャ」として紹介されています。
(画像出典:「Польза и вред бани для здоровья мужчин и женщин」)
5つの種類の風呂のイラストが描かれています。それぞれのイラストのタイトル部分を見ると
(左上)ハマム-トルコの風呂- 温度40~45℃ 湿度90~100%
(右上)フロ-日本の風呂- 温度35~50℃ 湿度45~100%
(2段目左)フィンランドのサウナ 温度90~110℃ 湿度3~8%
(2段目右)アイルランドの風呂 温度25~60℃ 湿度40~65%
(下)ロシアの風呂 45℃~65℃ 湿度40~65%*1
と書かれています。日本のところは「フロ-日本のバーニャ」と記載されています。ロシアの風呂(バーニャ)は温度は45~65℃とフィンランドのサウナより低い数値になっていますが、その分湿度が40~65%と高いことがわかります。
バーニャと聞くとロシアの蒸し風呂をイメージしますが、「ванна」(バーニャ)というのは広く「風呂」を表す言葉で、「日本のバーニャ」という言い方もあるわけですね。日本でもかつては「風呂」が蒸し風呂を意味していた、というのと似ています。ちなみにサウナは「сауна」(サウナ)と表記するようです。
ロシアのバーニャの入り方
ロシアの風呂、バーニャの入り方について、「Баня Гид」(お風呂ガイド)というサイトの「Как правильно париться в бане」 (風呂の入り方)では注意点や持ち物も含めて説明されています。まず注意点を見てみましょう。
(画像出典:「Как правильно париться в бане」 )
入浴前にやめておいた方が良いこと
・飲酒
・身体に物理的負荷をかける
・たくさん食べる
・もちろん禁煙です*2
サイトの本文を見ると、”Баня и алкоголь – понятия несовместимые, так что до и во время процедур придется исключить употребление напитков, содержащих градусы.(お酒と入浴は相容れないので、風呂の前、入っている最中にはアルコールを含む飲料を飲むべきではありません)"*3とあり、飲酒については心臓発作や脳卒中につながる危険性も指摘されています。
また、運動の直後も避けた方が良いとされています。"Перед очередной нагрузкой организма необходимо несколько часов отдыха. (次に身体に負荷をかけるまでに数時間の休息が必要です)"*4とあるように、身体に負荷のかかる運動をした直後は数時間あけてから風呂に入ることが推奨されているようです。
また、持ち物については次のように書かれています。
(画像出典:「Как правильно париться в бане」 )
バーニャに持参するもの
・タオル数枚
・石鹸、ジェル等、シャンプー
・手拭い(アカスリタオル)
・天然ウールもしくはフェルトの帽子
・ゴム製のスリッパもしくはサンダル
・ヴェーニク(ヴィヒタ)*5
一般的なお風呂セットに加えて、いわゆるサウナハットが持ち物の中に入っています。本文でも"она предохраняет голову от перегрева(頭を熱から保護します)"*6とその役割について言及されています。
また、最後にあがっているのは「веник」(ヴェーニク)です。直訳すると「ほうき」になりますが、ヴィヒタのことですね。ロシアではヴィヒタがかなり重要視されているのがわかります。本文でも、ヴィヒタは"непременный элемент в банной культуре(風呂文化に必要不可欠なもの)"*7とされています。ヴィヒタについては、のちほどもう少し詳しく見てみます。
入り方については、1セット目、2セット目に分けてポイントが書かれています。
(画像出典:「Как правильно париться в бане」 )
サウナの入り方1セット目
・ウォームアップの温度は60℃。
・ヴィヒタを蒸します。
・最下段で10分間横になります。
・5~7分ウォームアップして、急に立ち上がらないように。
・外に出て汗を洗い流しましょう。このプロセスには、シャワー、プール、雪、水桶などいくつか種類があります。*8
2セット目については以下のように書かれています。
(画像出典:「Как правильно париться в бане」 )
サウナの入り方2セット目
・80℃~90℃に上げます。(湿度は40%以上にしない)
・室内を歩きヴィヒタであおぎ始める(激しく叩いたり打ったりはしない)
・急に立ち上がらない。最下段で横になり、安静に。
・2番目のセッションは10~15分で十分です。*9
本文によると、最初のセットではヴィヒタを使うのは有効ではないけれど、お湯に浸しておくために最初から持っていく、とのことです。また、最初は無理をせず下段にいることが推奨されていて、"первичное пребывание в парилке не должно превышать 10 минут, а наиболее оптимальная температура не более 60 градусов.(最初のセットは10分を超えないように、温度は60℃を超えないように)"*10とされています。1セット目はマイルドセッティングで無理なくすごすようです。
2セット目はヴィヒタが必要だと書かれています。また、"Для усиления жара, каменку периодически поливают водой, причем, очень важно правильное поддержание параметров влаги и температуры (при 80-90 градусах жары влажность не должна быть больше 40%)(熱を強化するためには定期的にヒーターに水をかけ、湿度と温度のバランスを正しく維持することが非常に重要です(温度は80℃~90℃の間で、湿度は40%を超えないように)"*11と書かれています。水をかけることによって、つまり湿度を上げることによって体感温度を上げるわけですが、湿度が40%を超えないように保つことが重要だとされています。
他のものも見てみましょう。こちらはロシア語のサイト「9BAN.RU」に掲載されている「Инфракрасная сауна」(遠赤外線サウナ)の記事の画像です。ロシア語ですが、バーニャではなく遠赤外線サウナの入り方です。
(画像出典:「Инфракрасная сауна – хранитель здоровья и чувства меры」)
本文には1~6について、適切な入り方として文字での説明もついています。
1 – производится разогрев сауны в течение 15 минут;
(サウナは15分ほどであたたまります。)
2 – приём душа и активное расслабление, очень важно освободиться от накопившейся за день усталости, полностью очистить все поры кожи;(シャワーを浴びてリラックスしましょう。日中に溜まった疲労を取り除き、皮膚の毛穴を全て綺麗にすることが非常に大事です。)
3 – насухо вытираемся;(しっかり拭きましょう。)
4 – проходим сеанс в сауне от 30 до 50 минут;(サウナのセッションは30~50分です。)
5 – снова принимаем душ;(もう一度シャワーを浴びます。)
6 – отдыхаем и активно принимаем воду.(リラックスして、水分補給をきっちりしましょう。)*12
先ほどのバーニャの入り方に比べて、遠赤外線サウナは30分~50分と入浴時間が長いようです。工程もシンプルですね。
こちらは、バーニャの入り方ですが、ロシア語のものではなく、イギリス、ロンドンの「BANYA No.1」のHPの"Banya Etiquette"(バーニャのエチケット)というページに記載されている"A typical 3-hour Banya Experience"(典型的なバーニャでの3時間の過ごし方)です。
(画像出典:BANYA No.1)
本文を見てみると、"Put on a felt hat to prevent overheating and then enter the steam room for no more than 10 minutes on the first go.(フェルトの帽子をかぶり、頭が熱くなりすぎるのを防いで、最初のセットは10分を超えないように、バーニャに入りましょう)"*13と書かれていて、やはり最初のセットは10分以内とされています。更に、"Repeat the10-minute visits to the steam room with 20-30 minute breaks in between.(10分間、バーニャに入り、20分~30分休憩をする、というのを繰り返します)"*14とも書いてあり、休憩が長めに設定されているのがわかります。
また、クールダウンについては、"After Parenie or your 2nd visit it is the right time for a splash of refreshing cold water from the buckets or an electrifying and invigorating dip in the icy cold plunge pool (please take a shower before).(ウィスキングの後、もしくは2セット目の後はバケツから冷たい水を浴びたり、冷たいプールでリフレッシュしてください(入る前にシャワーを浴びてください)"*15と書かれていて、イラストの9や10はクールダウンの場面とわかります。シャワーで汗流しをする点についても言及されています。最初にあげたバーニャの入り方の1セット目の最後には「水桶」が出てきましたが、水桶というのはこのイラスト9番のようなものでしょうか。
そしてやはりヴィヒタを使ってのウィスキングは2セット目以降ということのようですね。
これは「Баня Дельфин」(風呂イルカ)というサイトに掲載されている「風呂のエチケット」というロシア語のイラストです。
(画像出典:「Банный этикет」)
同じイラストで文字だけ別言語のものも見かけました。いろいろな言語に翻訳されて使われているのでしょうか。
ロシアのヴィヒタ
先ほども触れたように、ロシアでは「веник」(ヴェーニク)、ヴィヒタが必要不可欠とされています。バーニャの入り方について見た「Как правильно париться в бане」 では、"Для банных веников используются травы и ветви деревьев, свойства которых по-разному влияют на человека.(ヴィヒタにはハーブと木の枝が使われますが、それぞれの植物の特性は異なる影響を人に与えます)"*16と説明されています。植物によって、消毒効果、ストレス軽減の効果など、いろいろな効果があるとされています。
(画像出典:「Как правильно париться в бане」 )
最初に紹介した5種類の風呂のイラストが掲載されている「Женский журнал Story-Woman.ru」(女性誌Story-Woman.ru)の「Польза и вред бани для здоровья мужчин и женщин」(健康のための入浴の利点と危険性)には、次の「ロシアの7つの治療用ヴィヒタ」という画像もありました。ヴィヒタに使う植物とそれぞれの効果が書いてあるようです。
(画像出典:「Польза и вред бани для здоровья мужчин и женщин」)
また、同じページにヴィヒタの主な種類、使い方のイラストもありました。
(画像出典:「Польза и вред бани для здоровья мужчин и женщин」)
バーニャにはどんなヴィヒタが用意されているか?
・樺
・カシ・柏
・イラクサ
・ライム・リンデン
・ヤマナラシ
バーニャのヴィヒタを蒸す正しい方法*17
更に、 保管の仕方や使い方についても解説されていました。
(画像出典:「Польза и вред бани для здоровья мужчин и женщин」)
ヴィヒタの保管方法・場所
①屋根裏の暗いところに吊り下げる
②バルコニーに吊り下げる
③ビニール袋に入れて冷蔵庫に入れる
ヴィヒタと共に入浴する方法
・足から始め、頭と背中で終わる
・最後にスポンジのように使う*18
種類も豊富、使い方だけでなく保管方法なども書かれており、ロシアではヴィヒタが必須アイテムである様子がよくわかります。
今回は、ロシア語で書かれているバーニャ・サウナの入り方やヴィヒタの種類、使い方について解説されているものを、イラストのあるものを中心に紹介しました。ヴィヒタに関するものが多く、内容も保管方法や種類などさまざまで、ヴィヒタが、つまりウィスキングが重要な工程であることが見えてきました。入り方やポイントを見ていくと、その国のサウナで重視されていることや必須となっている工程が見えてきて面白いです。
参考文献
9BAN.RU、「Инфракрасная сауна」
BANYA No.1、"Banya Etiquette"
Баня Гид、「Как правильно париться в бане」
Баня Дельфин、「Банный этикет」
Женский журнал Story-Woman.ru、「Польза и вред бани для здоровья мужчин и женщин」