サウナ室では時間を見ない、という人もいるでしょうし、砂時計や12分計をなんとなく見る人もいるでしょう。中には耐水性の腕時計を持ち込んできっちり時間を測る人もいるかもしれません。今回は、サウナ室の中の時間表示について考えてみます。
サウナ室内の時間表示
サウナ室の中で時間の経過を示すものと言えば、代表的なのは砂時計と12分計でしょう。デジタル表示のところなどもありますが、多くのサウナ室は砂時計か12分計を設置しています。これは日本のサウナ室の特徴の一つとも言えます。例えばフィンランドのサウナには時計がないということは、こばやしあやなの『公衆サウナの国フィンランド 街と人とをあたためる、古くて新しいサードプレイス』でも指摘されています。こばやしは「サウナ浴に、時計を必要としないフィンランド人」という見出しで次のように述べています。
フィンランド・サウナの室内には十二分計も砂時計もありません。それは、外的な指標に縛られなくても、自発的に好きなだけ長く居られる証であり、そもそも無理して長く居る必要はない、という証でもあるのです。サウナでの滞在時間を決めるのは、個々人の、その日その場所での、感覚的な欲求や満足感ただそれだけです。*1
フィンランドのサウナには一般的に砂時計を含むタイマー類はないということのようですが、海外でもサウナ用の砂時計はいろいろ販売されています。
ざっと見たところ、海外のサウナタイマーは主に砂時計で、15分のものが多いようです。オランダのサイト、ALMOST HEAVEN SAUNAでは、サウナ用砂時計について次のように説明しています。
Keep track of how much time has elapsed while in your sauna with Almost Heaven’s Sand Timer. Set the timer to periodically take breaks, rehydrate, or jump in a cool shower.*2
（このサウナタイマーによってサウナでの時間の経過を追うことができます。タイマーを設置して、定期的に休憩をしたり、水分補給をしたり、冷たいシャワーを浴びたりしてください。）
どのくらいで休憩をとるか、水分補給やクールダウンをするか考える指標として、砂時計は海外のサウナ室でも置かれているようです。
アメリカのサイトsteam sauna bathでは、次のように砂時計のメリットが説明されています。
Time passes quickly in the relaxed atmosphere of a sauna. Since no clock can withstand the heat, time can easily get away from you with no way off knowing how long you've been bathing. We have the perfect solution ... passed down thru the ages we have the timepiece that requires no power.（中略）so you can easily start a second 15-minute sauna bath and never lose track of time.*3
（サウナのリラックスした雰囲気の中では、時間がはやく過ぎていきます。熱さに耐えられる時計はないため、自分がどのくらい入浴しているか知ることなく時間はどんどん過ぎていきます。完璧な解決策があります。動力を必要とない時計が受け継がれてきています。（中略）だから、時間を無駄にせず、15分間の2セット目を始められるわけです。）
高温環境のサウナ室では、砂時計が使いやすいというのは日本でも海外でも同じようです。そしてやはり15分くらいが1セットの目安なのですね。
一方日本のサウナ用の砂時計を見てみると、5分と10分のものを販売しているところが多いです。
社団法人日本サウナ協会（現サウナ・スパ協会）が発行する「SAUNA」の中に、中山真喜男の「サウナ時計」に関するコラムがあります。そこではサウナ室内の時計は砂時計、12分計、デジタル時計が主に使われることが指摘され、砂時計については「国産品には5分計と10分計がありますが、時計で計ってみると実に正確です」*4とあります。やはり日本の場合は砂時計であれば5分か10分がスタンダードなようです。そして、中山は12分計について「パブリックサウナで一番多く使われています」*5と言います。デジタル時計の施設も中にはありますが、やはり砂時計と12分計が主流と考えられそうです。
サウナ用砂時計いろいろ
サウナで使う砂時計、日本ではこのタイプをよく見かける気がします。
（画像出典：skSATOオンラインショップ）
5分計の砂時計で、壁に固定できるタイプのものです。銭湯のサウナなどでもよく見かけますね。「サウナ用砂時計」という商品名です。
海外でもサウナ用の砂時計はいろいろ売られているようです。
（画像出典：123Saunas）
これは、ラドルと桶と温度計・湿度計、そして砂時計のセットです。サウナキット、というような形でセット販売されています。砂時計は15分計です。海外のサウナ用砂時計の写真を調べると、このタイプの15分計が多いように思います。サウナ室に入っている時間というより、ロウリュをしてからどのくらい経過したかを測ったりするのかもしれません。
こちらはドイツのサウナ用砂時計です。 15分のものが多いですが、左下は30分計です。30分の砂時計、日本のサウナではまず見ることはないですね。
（画像出典：sonntag sunday pools）
こちらもドイツの砂時計です。ラドルと水滴があしらわれています。
（画像出典：POOL HAMMER）
もっとはっきり、砂時計の横にイラストが入っているものもあります。
（画像出典：amazon）
こちらはロシアのものです。砂時計部分がひっくり返せるようになっていて、横にイラストがあります。時間はやはり15分ですね。
（画像出典：АШАН）
温度計と砂時計がセットになっているものもありました。右側に温度計、左側に砂時計があります。この砂時計は珍しく5分計でした。
（画像出典：global sources）
これも温度計とセットのものです。ロシアの砂時計・温度計です。これは温度計とセットですがやはり時間は15分です。
（画像出典：САНТЕХНИКА ОНЛАЙН）
同じくロシアのもので、温度計と15分の砂時計のセットです。温度計と砂時計の両方をおじさんが持っているようなデザインになっています。
（画像出典：prom）
こちらもロシアのものです。温度計だけでなく、湿度計もついています。温湿度計と砂時計のセットですね。ヴィヒタや桶のイラストが可愛らしいです。こちらも時間は15分です。
（画像出典：АШАН）
ロシアにはこんな素敵な砂時計もありました。
（画像出典：pikabu)
こちらは依頼されて作った、という人が制作過程をあげているサイトの写真です。普通の砂時計からサウナ用の砂時計を作ってほしいという依頼があった、ということのようです。高温環境で使えるようにオイルでコーティングしていることなど、言及されています。
海外のサウナ用砂時計はシンプルなものだけでなく、イラスト入りのものや温度計とセットのものなど、いろいろな種類のものがありました。15分計が多いので、日本のサウナ室では使い勝手が悪いかもしれませんが、サウナアイテムとして欲しくなりますね。
今回はサウナと時間について、サウナ室内の時間表示について考え、海外のサウナ用砂時計を紹介しました。次回は、日本のサウナ室の二大タイマー、砂時計と12分計について考えてみます。
参考文献
こばやしあやな（2019）『公衆サウナの国フィンランド 街と人とをあたためる、古くて新しいサードプレイス』、学芸出版社
中山真喜男（2005）「サウナあれこれ サウナ時計」、社団法人日本サウナ協会発行『SAUNA』344号
