Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

サウナについて調べ、考え、まとめるブログ。知れば知るほど、サウナにはまだまだ謎がある。その謎を解き明かしていくために、サウナについて様々な角度から考察してサウナ理解を深めます。身体で感じるだけでなく、頭で仕組みを考えるとサウナはもっと楽しい。サウナ好きがサウナをもっと知りもっと楽しむために始めたサウナ考察ブログ。 お問合せは下記までどうぞ。 saunology37@gmail.com

水風呂の色

 水風呂にも水温や広さ、深さ、バイブラの有無、水質などさまざまな要素があり、施設によって多様です。見た目で言うと、水風呂は基本的に無色透明のことが多いですが、中には色のついた水風呂もあります。今回は、水風呂の色についてまとめてみます。

 

水が青く見える仕組み

 昼の海や湖は青く見えます。同じように、浴槽の水風呂も青っぽく見えることがあります。海が青く見える理由は、光のせいです。光は物にあたると一部が吸収されて、残りは反射してはね返ります。「色」が見えるのは、この反射した光が目に入り、何色か判断しているという仕組みです*1。水には赤色の成分をたくさん吸収し、青色の成分はあまり吸収しないという性質があるそうです*2。光が海の物質にあたって反射すると、吸収されにくい青色の成分が多くなり、私たちの目には青く見えるというわけです。

 浴槽の水風呂が青っぽく見えるのも、これと同じ仕組みで、赤色の光は水に吸収され、吸収されにくい青色がはね返っているからということです。特にアイボリー系の浴槽で自然光が差し込みやすい明るい浴室では青く見えやすいそうです*3

水風呂

(画像出典:たきのゆ(福井)|【mizuburo】日本最大級の良質な水風呂検索サイト)

  

黒い水風呂

 黒湯の温泉・鉱泉を使った黒い水風呂もあります。「鉱泉水風呂」というような名前の水風呂もありますが、温泉と鉱泉の違いは何でしょうか。

 温度の高いものが「温泉」、低いものが「鉱泉」「冷泉」、と説明しているものもありますが、「温泉法」の定義からするとそういうことでもないようです。「AKITA湯の國」というサイトでは、「温泉法」の定義を紹介しながら温泉と鉱泉の違いを説明しています。「温泉法」によると、「温泉」は次のように定義されています。

地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気、その他のガス(炭酸水素を主成分とする天然ガスを除く)で、湧出口での温度が摂氏25度以上のものか、鉱水1kgの中に定められた量以上の物質が含まれるもの*4

  「摂氏25度以上のものか、鉱水1kgの中に定められた量以上の物質が含まれるもの」という定義なので、25未満でも定められた量以上の物質が含まれていれば温泉であるということです。

 鉱泉の方は、環境庁の「鉱泉分析指針」に「温水と鉱水の泉水」*5と規定されているとのことで、冷たいものだけではないことがわかります。温泉と鉱泉の違いは、「水蒸気やガスを含むか含まないかというだけであって、ほとんど同じと考えていいようだ」*6と言われています。一般的には、沸かさずに入浴できるものを温泉、それ以外を鉱泉と呼ぶようです*7

 黒湯は黒褐色、黒色の温泉です。濃い黒の場合もあれば、茶色っぽい場合もあります。黒湯はどうして黒いのでしょうか。火山性の温泉は一般的に黒くならず、黒湯が出る源泉は海洋性の温泉だそうです*8

 温泉は大きく分けると「火山性」「非火山性」の2種類で、海洋性の温泉は「非火山性」の温泉に分類されます*9。海洋性の温泉は、「海の底に沈む地層から湧出している温泉のこと」です*10。黒湯はこの海底の地層から出る温泉、ということですね。

 色が黒い理由は、フミン酸が豊富に含まれているためだそうです*11。海の底に沈んで溜まった海藻や藻、木の葉や草などの上に火山灰などが沈殿し、地層になり、ここで長い時間をかけて分解された有機化合物群の一種がフミン酸だそうです*12。これは石炭や石油が生成される過程と一部共通していて、石炭になるほど炭化していない泥炭層や、石炭化の度合いが最も低い亜炭層からくみ上げたものが黒湯と呼ばれるそうです*13。「炭化」と言われると黒い理由もわかる気がします。石炭や石油ができるのと同じような過程で、石炭ほど炭化していない地層からくみ上げる湯がフミン酸を豊富に含んだ黒っぽいものになるということですね。

 海洋性ということで、黒湯は冷たい状態のものが多いそうです*14。そのため、加温して使うところも多いようですが、水風呂で黒湯のものを結構見かけるのはもともと低い温度のものが多いからかもしれません。 港区の麻布黒美水温泉竹の湯も、水風呂の黒湯は源泉で、お湯の方は沸かしているとのことです*15

 

サウナ

画像出典:「麻布黒美水温泉 竹の湯(港区|麻布十番駅)麻布の濃厚すぎる黒湯温泉で、お肌ツルツル至福の時を! 「麻生十番」散歩とセットで行きたい銭湯」『東京銭湯』)

 

 黒湯は美肌効果があるとされています。

黒湯は、衝撃的な見かけとは異なり、「美肌の湯」とも言われています。黒湯の黒褐色系の色を生み出している主成分のフミン酸は、地上に湧出しても劣化することがないので、お湯の中に含まれている豊富なミネラル分により最大限の効果で美肌へ導いてくれるのを大いに期待できるようです。

そして、これに加えて、フミン酸の生成過程で発生する、血行促進効果がある重曹(炭酸水素ナトリウム)や肌の保湿をし新陳代謝を促すメタケイ酸も多く含んでいます。また、泉源によっては、細胞を活性化するヨウ素も含まれているので、肌トラブルの改善や美肌への相乗効果も生み出すそうです*16

  ミネラル分が豊富ということは、黒湯の水風呂は硬度が高めということでしょうか。いろいろなものを含んでいそうなので、熱交換という観点から考えると冷え方は穏やかかもしれません。

(画像出典:SPA&HOTEL 和 -なごみ-HP)

 

白い水風呂

 「シルク風呂」、「絹の湯」といった名前で、白い風呂もあります。お湯の浴槽が多いですが、中には白い水風呂もあります。こうした白い風呂は、入浴剤などで着色しているのではなくマイクロバブル(微細気泡)によって白く見えています。東京都港区赤坂にあるサウナリゾートオリエンタルの水風呂で知っている方も多いのではないでしょうか。この色が着色しているわけではないというのは驚きですよね。

サウナリゾートオリエンタル

(画像出典:【公式】サウナリゾートオリエンタル赤坂 Twitterアカウント)

 

 マイクロバブルは、直径1~100µm(ミクロン)の気泡のことです*17。1µmは1mmの1/1000で、非常に小さい気泡ということになります。マイクロバブルの風呂には、1ccの湯に約12,000個の超微細な泡が含まれるそうです*18。白く見えるのはこの泡の色ということです。

 そもそも泡はどうして白く見えるのでしょうか。色のついた石鹸を使っても、泡立てると泡自体は白いです。これも、光が影響しているようです。1つの泡は透明ですが、これがたくさん集まると光が当たったときに乱反射し、あちこちにはね返ります。この乱反射の光は白く見えるので、泡は白く見えるというわけです*19。海の波や滝が白く見えるのも、この光の乱反射のためだそうです。

 マイクロバブルを使った水風呂も、小さい気泡が大量にあるために光が乱反射して白く見えるということでしょう。お湯のマイクロバブルの風呂の効果は、次のように説明されています。

気泡が体を包み込むため、お湯から体への熱の伝わりが緩やかになり、ゆっくりと体を温めます。入浴後は高くなった体温を徐々に放出するため、身体がぽかぽかした感じが持続します*20

マイクロバブル

(画像出典:マイクロバブルバスユニットの「自宅温泉」でステイホームの疲れを癒す | Rinnai HP)

 

 水風呂として使うときにも、気泡は熱の伝わり方を穏やかにすると考えられます。気泡のない普通の水風呂に比べて、熱交換は穏やかになるのではないでしょうか。冷え方がゆるやかになるといえそうです。

 

 今回は水の色を中心に、水風呂について考えてみました。色のついた水風呂はそれほど一般的ではないですが、考えてみると水温や浴槽の広さ、深さだけでなく水風呂にもいろいろな種類がありますね。サウナ室もさまざま、水風呂もさまざまと考えると、サウナは非常に多様だなと改めて感じます。

  

参考文献・資料

AKITA湯の國「温泉と鉱泉の違い」(最終アクセス日:2021年9月3日)

Rinnai「マイクロバブルバスユニットで体感する驚きの入浴体験と効果」(最終アクセス日:2021年9月3日)

THE GATE「【黒湯】東京都蒲田にある都内屈指の温泉地の魅力とは」2021年4月21日(最終アクセス日:2021年9月3日)

warakuweb「東京、日帰りで楽しめる黒湯3選!美肌の温泉「黒湯」とは?近場で小旅行!」2019年12月19日(最終アクセス日:2021年9月3日)

さいたま市健康科学研究センター「1お風呂の水が青く見える、水まわりが青くなる。」(最終アクセス日:2021年9月3日)

日本海事広報協会「海の水はどうして青くて塩からいの」(最終アクセス日:2021年9月3日)

日本石鹸洗剤工業会「子どものページ」(最終アクセス日:2021年9月3日)

リフォマ、「マイクロバブルの後付けしよう!設置方法とおすすめメーカーも紹介」2019年3月14日(最終アクセス日:2021年9月3日)

 

*1:日本海事広報協会

*2:同上

*3:さいたま市健康科学研究センター

*4:AKITA湯の國

*5:同上

*6:同上

*7:同上

*8:warakuweb

*9:THE GATE

*10:同上

*11:warakuweb

*12:同上

*13:同上

*14:同上

*15:東京銭湯

*16:warakuweb

*17:リフォマ

*18:同上

*19:日本石鹸洗剤工業会

*20:Rinnai