Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

サウナについて調べ、考え、まとめるブログ。知れば知るほど、サウナにはまだまだ謎がある。その謎を解き明かしていくために、サウナについて様々な角度から考察してサウナ理解を深めます。身体で感じるだけでなく、頭で仕組みを考えるとサウナはもっと楽しい。サウナ好きがサウナをもっと知りもっと楽しむために始めたサウナ考察ブログ。 お問合せは下記までどうぞ。 saunology37@gmail.com

サウナ室の壁材 -竹-

 「サウナと熱 -素材による熱伝導率・比熱の違い-」では素材ごとの熱伝導率や容積比熱について比較してみました。やはり木材はサウナ室に適した素材であるということが数値からもわかりましたが、サウナ室の内装、壁には他の素材が使われていることもあります。今回はその中の一つ、竹について考えてみます。

竹

(画像出典:ウィキペディア(Wikipedia))
 

竹という素材

 比熱や熱伝導率などを見て、木材はサウナ室に向いている素材だということがわかりました。一方、数は多くないですが、竹を壁に使ったサウナ室もあり、竹もサウナ室に使うのに悪くなさそうな気がします。

 竹とは、「イネ科(APG分類:イネ科)Gramineaeのタケ亜科Bambusoideaeに属する植物の総称」*1です。竹は木とは違い、「イネ科の草」*2です。用途について、『日本大百科全書』には次のように書かれています。

東洋諸国にはタケの種類と量が豊富で、材料が入手しやすいことと加工が容易なため、建築材、家庭用具、農具、漁具、楽器、玩具(がんぐ)、茶道具、華道具など、あらゆる方面に利用される*3

 また、農林水産省のホームーページでは、日本で古くから竹が加工されてきたことに触れられています。

私たち日本人と竹の関わりの歴史は古く、縄文時代の遺跡から竹を素材とした製品が出土しています。日本人は古来より竹を有用な植物として利用してきたのです*4

竹

(画像出典:農林水産省HP)

 

 竹は縄文時代から加工されていたということです。籠などの日用品が竹で作られていたことは、古典文学を見ても明らかです。また、建築の材料としても日本では竹が使われてきました。

伝統的な日本家屋にはいたる所に竹が使われていました。土壁には竹を芯に塗り込めてありました。この壁が寒さ、暑さ、湿気などを調整するなど、日本の気候に適した働きをしているのです。堅牢で熱伝導率が高い竹材は、現在でも床材など住宅用資材として利用されています*5

 竹は堅牢で熱伝導率が高い、と書かれています。熱伝導率が高いということは、熱を伝えやすいということになります。昔から土壁の芯に竹を使ったりしていたということですね。竹の熱伝導率が高いということは、いろいろなところに書かれていました。

竹の性質は弾力に富み強靭で熱伝導率が高く均一な太さで繊維がそろっていて割りやすい*6

 

木材に比べ熱伝導率が高い竹材は床暖房に相性の良い床材と言えます*7

 どうやら竹は熱伝導率が高いことが特徴のようです。具体的な数値は『理科年表』にも記載がなく、残念ながら正確な比較はできませんでしたが、竹は熱伝導率が高い、という記載は少なくなく、木材よりも熱伝導率が高い、という記載もあったため、熱伝導率が高めなのかもしれません。一方、建築の材料としての使いにくさも指摘されています。

その形状や厚み、節間の長さの不規則性のため加工や接合が難しい。きっちりと結合させられないので、熱帯域以外では不可欠である断熱壁の構成に課題がある*8

 竹には節があり、形がまちまちなのでしっかり隙間なく組み合わせることが難しいというのです。そう考えると隙間ができてしまい、壁に使うには断熱の部分に課題があるということですね。隙間ができるということを考えると、土壁の中に入れたり、別の素材の壁の上から竹を貼ったりするのがよいのかなという感じがします。

 竹といえばアジアのイメージですね。竹は主に中央・南アメリカとアジアで生育すると言われています*9。竹は「気候が温暖で、湿潤な環境でよく育つ植物」*10だそうです。つまり温暖でも雨が少ない地域では育ちにくいということです。

世界的な竹林の面積は明かではありませんが、アジアでは中国 340万ha、タイ 81万ha、 ベトナム 148万ha、ミャンマー 220万ha、インド 957万ha? などと言われています。
また、アジアの竹林面積は世界の面積の8割程度を占めるのではないかとも言われています*11

竹

(画像出典:竹資源高度利用研究室HP)

 

 やはりアジアには竹が多いということでしょう。海外のサウナで竹を使ったものはあるだろうかと調べてみたところ、あまりサウナ室の壁に使うということはなさそうでしたが、家庭用サウナに竹のサウナがありました。こちらは3 Person Bamboo All Weather Outdoor Far Infrared Sauna、3人用の竹で作られた遠赤外線サウナです。

 

サウナ 竹

(画像出典:SaferWholesale.com)

 こちらの商品、商品説明に次のように書かれていました。

Made using ultra high quality, 100% NATURAL BAMBOO. Stronger than other woods, and looks much nicer!*12

(100%高品質の天然の竹でできています!木よりも強く、見た目も木よりナイス!)

 丈夫さと見た目のことしか書いてありませんでした。海外のサウナの壁材についての記述に竹が出てくることは、ざっと見たところなさそうでした。

 また、フローリングの素材として、竹についてデータを公表しているところがありました。株式会社田所室内装飾という会社のホームページには、竹のフローリングと木のフローリングについて数値を比較した結果が載っていました。「当研究所で性能試験を測定しました。元来竹の材料は測定結果がなく、比較データもなかったのですが、当研究所の最新のテスト装置により、その試験結果が下記の表のように出ました。」*13とのことです。

竹の熱

 

 この試験結果によると、熱伝導率は木とそれほど変わらないようです。先に引用した竹は木材よりも熱伝導率が高い、としているサイトもフローリングに関してのページだったので、この製品に関してはこのような数値になるのか、実はあまり差がないのか、やはり実際の数値が気になるところです。別のブログで、たしか熱伝導率は0.2くらいだったと見たような記憶がある、と書いている人もいました。これが正しければ、木材より少し高め、ということになりそうです。竹にも木にも種類がたくさんあり、この製品の場合はこういう結果だった、ということかもしれません。調べてみると一般的には、竹は熱伝導率が高い、とされているような印象です。

 そして、比熱・熱容量を見ると木よりも竹の方が値が大きいことがわかります。木よりも温まるのに時間はかかるが、たくさんの熱を抱え込めるということかもしれません。これもこの製品の場合、ということかもしれませんが。

 竹に関する記述についてまとめてみると、熱伝導率は高め(木材より高いとしている記述もある)、熱容量も大きめと言えるかもしれません。つまり結構熱くなる素材、と考えられそうです。

 竹を使ったサウナ室、思い出してみると女性側であることが多いようです。男性側では壁に竹を使っている例はあまりないようです。

  

 スパ&ホテル桜庵

 竹を使っているサウナ室の一つに、スパ&ホテル桜庵の女性側があります。

 

【スパ&ホテル桜庵 竹炭サウナ(女性側)】

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(画像出典:FUJIYAMA NAVI)

 

  竹炭サウナ、つまり竹を炭化させたものが壁に使われているサウナ室ということです。竹炭となると、また熱伝導率や熱容量が変わりそうですが、素材は竹ということで竹を使ったサウナ室の例に含めてみました。こちら、遠赤外線ヒーターのサウナ室ですが、室内がしっかり熱いサウナ室でした。

 ちなみに竹炭を使っているのは女性側のみで、男性側は溶岩サウナというセルフロウリュができるサウナ室です。

 

【スパ&ホテル桜庵  溶岩サウナ(男性側)】

サウナ

(画像出典:スパ&ホテル桜庵HP)

 こちら、セルフロウリュができるサウナ室で、桜庵のホームページには「壁の溶岩に蓄熱することによる輻射熱で室温以外に体感温度が上がるドライサウナです」*14と書かれていました。

 竹炭にせよ、溶岩にせよ、スパ&ホテル桜庵のサウナ室は壁材のことを考えて作っているサウナ室と言えそうです。

 

アダムアンドイブ

 竹のサウナ室と言うと、アダムアンドイブの女性側、イブ側のサウナ室が代表的かもしれません。

 

【アダムアンドイブ サウナ室(女性側)】

サウナ

(画像出典:「サウナ女子が選ぶ、女子が行くべき最旬サウナスポット3選」)

 

 イブのサウナ室はヒーターの周り以外は一面竹に見えます。「サウナと温度 座面温度の計測~女性サウナ室~」でも、このサウナ室の熱さと竹が関係あるのでは、というようなことを書いていました。表示温度が90℃台で座面の温度が70℃台と、比較的表示温度と座面での温度の差が大きいサウナ室ですが、体感はむしろ表示温度に近い、熱く感じるサウナ室です。入った瞬間に熱い!と思うタイプのサウナ室ではないですが、少しいると汗もどんどん出てくるサウナ室です。触れると壁も熱く、やはり木とはまた違った熱さがありそうです。

 ちなみに男性側、アダム側は竹ではなく壁材が薬玉王石・黄土・木炭・純金など複数の素材からなるサウナ室です。これはこれでたくさんの壁材を使用しており、アダムのサウナ室の熱さの秘密に関係していそうな気がします。

 

【アダムアンドイブ サウナ室(男性側)】

サウナ

(画像出典:アダムアンドイブHP)

 

 女性側の浴室内には岩盤浴もありますが、こちらはアダムのサウナ室と同じような素材の壁になっています。こちら岩盤浴ですが、床が熱くてじっと立っていられないくらいです。

 

【アダムアンドイブ 岩盤浴(女性側)】

サウナ 岩盤浴

 (画像出典:アダムアンドイブHP)

 

 竹の生育地域の中心はアジアなので、竹は西洋のサウナ室よりも日本などアジアのサウナ室に使われる傾向にありそうだと言えます。また、古くから建築にも竹を使っていた日本だからこその、日本特有のサウナ室とも言えるかもしれません。

 また、そもそも例は少ないですが、男性側には竹の壁があまり見られないということで、女性側のサウナ室に竹を使う傾向にあるのでしょうか。女性側に多いという傾向もあるかもしれません。竹は熱伝導率が高い、という情報がありましたが、実際にイブの壁は触ると結構熱いです。体質的に発汗しにくい女性側のサウナ室で、ヒーターの温度を上げるのではなく壁に木よりも熱伝導率・比熱の高い竹を使う、ということがあるのかもしれません。また、皮下脂肪の量などから実は女性の方が熱さ・冷たさに強いという点から見ると、触ったときに木よりも熱くなる竹は女性側だから使える、という可能性もあるかもしれません。推測の域を出ませんが、竹を使ったサウナ室に不思議な心地良さがあることには、木材とはまた違った熱伝導率・熱容量の値が関係しているのかもしれません。

 木材に種類があるように、竹にもいろいろな種類があります。建材としての竹のカタログなど見ていると、いろんな竹があり、もっといろいろな竹を使ったサウナ室に入ってみたくなります。竹もサウナ室に使うのによいとしたら、日本に特有のサウナ室として海外にも発信できるかもしれません。竹の壁のサウナ室、竹の桶の水風呂、そして竹林の外気浴。考えただけでわくわくします。誰か作ってください。

竹

 (画像出典:caedeKyoto[カエデ京都] 紅葉と伝統美を引き継ぐバッグHP) 

 

 今回は、竹を使ったサウナ室について考えてみました。壁の内側にどういう素材を使うかがどこまで体感に関係するかはわかりませんが、熱さや心地よさの秘密を考えるときに、壁にも目を向けてみると何か傾向が見えてくるかもしれないですね。

 

 参考文献・資料

ALG 建築照明計画株式会社ホームページ、「竹の魅力」、2019年4月9日(最終アクセス日:2021年2月12日)

SaferWholesale.com、3 Person Bamboo All Weather Outdoor Far Infrared Sauna商品ページ(最終アクセス日:2021年2月12日)

株式会社竹田木材工業所ホームページ、「竹床材(フローリング)」(最終アクセス日:2021年2月12日)

株式会社田所室内装飾ホームページ、「光 竹フローリングの試験結果」(最終アクセス日:2021年2月12日)

農林水産省ホームページ、「特集1 竹のおはなし(2)」

モーティス,ザック、「建材としての竹が実現するカーボンネガティブな建築」、『Redshift』AUTODESK、2019年9月3日(最終アクセス日:2021年2月12日)

 渡邊政俊、「タケ・ササ類の分布 」、『Bamboo Home Page』(最終アクセス日:2021年2月12日)

 

 

*1:日本大百科全書

*2:モーティス

*3:日本大百科全書

*4:農林水産省HP

*5:同上

*6:ALG 建築照明計画株式会社HP

*7:株式会社竹田木材工業所HP

*8:モーティス

*9:同上

*10:渡邊

*11:同上

*12:SaferWholesale.com

*13:株式会社田所室内装飾

*14:スパ&ホテル桜庵HP