Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

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サウナ室内の素材や内装

 「サウナと熱 -比熱と断熱-」では、比熱と断熱についてまとめて、木材がサウナ室に適した素材であるということを確認しました。比熱や断熱のことを考えると、サウナ室の壁に使う素材によって熱の伝わりやすさ、逃がしにくさなどが違って、そのことが体感にも影響があるのでは、という気がしてきます。しかしサウナ室の壁とはそもそもどういう構造なのでしょうか。また、サウナ室に使う素材について、何か決まりなどはあるのでしょうか。今回は、サウナ室の内装に使われる素材について、決まりやその構造についてまとめてみます。

 

 サウナ室内の素材

 サウナ室のベンチや壁には木材が使われるのが一般的ですが、どこにどういう素材を使うべきか、何か決まりはあるのでしょうか。 ヒーターの周りをどうするか、ということについては、いろいろ記述がありました。例えば、『サウナ管理士養成研修講座3 サウナの設備学』には次のように書かれています。

 

ストーブの位置は、ベンチを有効に配置できるように室の入隅部に収め、周囲は、壁・天井とも不燃材で仕上げます。

タイル・レンガ・大谷石・坑火石・石綿スレート板・アスベスト板などなどがよく使われていますが、大理石や花崗岩などは耐熱性が小さいので使わない方がよいでしょう*1

 

 ヒーターの周りのどの程度を不燃材で仕上げるかということについても、日本サウナ・スパ協会による「サウナ設備設置基準」に書かれていました。石などを置いて温める対流式の場合は、図の斜線部分は不燃材を使うことと書かれています*2

サウナ設備設置基準

サウナ設備設置基準


 

  遠赤外線ヒーターなど、輻射熱メインのサウナ室の場合は、図の斜線部の部分が不燃材で仕上げる部分とされています*3

サウナ設備設置基準

サウナ設備設置基準

 

 具体的には、次のように書かれています。

斜線部分の天井、壁及び床は、天井面にあってはロックウールの吸音板、壁面にあっては抗火石、床面にあってはコンクリート又はこれらと同等以上の遮熱性を有する不燃材料で仕上げること。
また、断熱材にあっては、有効に遮熱できる不燃材料とし、厚さ25㎜以上で密度24kg/m3以上のロックウール、グラスウール等とすること*4

 

 ヒーターの周りをどうするかということは、サニーペットのホームページにも記載がありました。

ストーブは、相当高温に熱せられるので、事故にはくれぐれも注意しなければなりません。

万一の事故防止のため、周囲にはレンガ、または石積みを施し、天井には防火板を用います。すぐ脇の壁面には、タイルまたはレンガ、石を貼ります*5

 当然と言えば当然ですが、ヒーターの周りは不燃材を使うということになっていて、その範囲についても熱源に応じて基準があるということです。

 

 確かにストーブの周りはレンガが使われていたりします。ストーブ周りについては、次のような記述もありました。

ベンチ側には、ブロック・レンガなどを腰まで積み上げてストーブを囲みます。この際、室内空気の対流が滞りなく行われるように、下部に空気孔を設けて、ストーブ周りに熱がこもるのを防ぐように注意します*6

  レンガの壁がストーブを囲っていて、下の方にところどころ穴が開いている、というのをよく見かけますね。

 

 ストーブ周り以外の素材について、サニーペットのホームページには次のように書かれていました。  

室内の天井、壁、ベンチ、その他の主要部は、特殊な乾燥剤を使いますが、木材の種名は特定されません。
木材に恵まれたフィンランドでは、丸木材を使ったものを多く見かけますが、わが国のサウナではほとんど加工した板材を用います。サウナルーム周囲間仕切は、ふつうブロック積みで囲みます。
現在わが国に設備されているサウナの大部分は、サウナの発祥地フィンランドにおけるサウナの原型とは、多少異なったところがありますが、これは湿度の非常に低いフィンランドとわが国との気候風土の違いによることと、わが国のサウナが営業中心で発達したことによります。
また一部には、サウナルームの単調さに変化を求めて、趣向を凝らしたサウナづくりのアイディアも生まれたようですが、それも一時的な流行現象で、結局はフィンランド式の昔ながらのタイプに落ち着いてきました*7

  フィンランドのサウナ室との違いにも言及されていて興味深いです。趣向を凝らしたサウナづくり、壁材を木材だけでなくいろいろ使ってみるというような試みもその例の一つでしょうか。しかし結局はフィンランド式に落ち着いた、というのは、やはりサウナ室に使う素材としては木材が理にかなっているということかもしれません。

 

防熱

 サウナ室の壁、と言うと私たちは室内から見える部分について考えますが、実際にはどういう構造なのでしょうか。『サウナあれこれ』では、サウナ室壁面の防熱仕様について、日本のものとフィンランドのものを比較しています。

 

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(画像出典:『サウナあれこれ』)

 

 これらは、防熱仕様の代表的な例を図示したもので、中山眞喜男はフィンランドと日本の違いについて次の三点を指摘しています。

①防熱材の厚さ

②日本では外壁側に空気層を設け、フィンランドではサウナ室内に通気層をとっている

③フィンランドでは耐火ボードがない*8

 

 確かに、断熱材(ロックウール)のところを見ると、フィンランドでは50~100となっているのに対して日本のものは25と薄いことがわかります。防熱材の厚さが違う理由として、中山はフィンランドと日本の気温の違いと経済性の二点を指摘します。フィンランドに比べて日本の方が平均気温が高いこと、そして防熱材を厚くすればそれだけコストがかかるので、最低限におさえていることが指摘されています*9

 また、日本の壁の方に空気層があるのは、「一種の防熱材」*10であると言います。「サウナと熱 -比熱と断熱-」でも見たように、空気は熱を逃がしにくいので、空気層を設けることで断熱効果があります。フィンランドの方にある通気層は、「この隙間を通気が流れるように」*11作られているそうです。中山は、「私の知るかぎりでは、日本には二例あるのみです」*12と述べており、日本にはあまりないスタイルということがわかります。この通気層の効果について、推測であるとことわった上で、中山は「このギャップの対流により、湿度の高い室内空気が、裏側へ浸透するのを防ぎ、結露を防止しているのでは」*13と指摘します。

 フィンランドとの違いも興味深いですが、考えてみればサウナ室の壁も目に見えない部分を含めていろいろ複雑ですね。

 

サウナの内装

 サウナ室の壁には、防熱や防湿などを考えて工夫が必要なようです。私たちの目に見える内装の部分は、ヒーター周り以外には木材が使われていることが多いです。

 株式会社日本サウナのホームページには、サウナ室につかう材料について次のように書かれています。

壁材12mmベンチ・スノコ材は18mm以上で壁材比重の少ない石で仕上げると耐久性があります。天井材はミネラートン・ソーラトン等で仕上げると明るくなります。

内装の仕上げ材は無節無垢の白木材て゛本物の素材にこだわり厳選し使用しています*14

 また、壁用の木材と言っても、いろいろな種類のものが売られています。例えば、株式会社神奈川産業のホームページには、次のように壁材がいろいろ紹介されていました。

 

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(画像出典:株式会社神奈川産業HP)

 

 同じ木材でも、スプルス材は軟らかく肌触りが良い、アバチ材は変色・焼けに強いなど特徴があることも指摘されています*15。木の種類による特徴などについては「サウナと木材」でもまとめました。サウナの木材

サウナの木材

 

 ベンチや壁の内装には、木材が使われていることが多いわけですが、他の素材が部分的に使われていることなどもあります。ヒーター周りを不燃材にする必要があるということとはまた別に、サウナ室の壁の内側には木材以外が使われることもあるということです。

 

 今回は、サウナ室の内装や壁について見てみました。次回はようやく素材ごとの比熱などについて考えてみたいと思います。 

 

 

参考文献・資料

株式会社神奈川産業ホームページ

株式会社日本サウナホームページ

公益社団法人日本サウナ・スパ協会(2003)「サウナ設備設置基準」

サニーペットホームページ、「営業用のサウナ設備工事のポイント【1】」(最終アクセス日:2021年1月23日)

社団法人日本サウナ協会教育検討委員会 監修(1995)『社団法人日本サウナ協会教育検討委員会』

*1:社団法人日本サウナ協会教育検討委員会、pp.12-13

*2:日本サウナ・スパ協会「サウナ設置基準、p.5」

*3:同上、p.15

*4:同上、p.5

*5:サニーペットHP

*6:社団法人日本サウナ協会教育検討委員会、p.13

*7:サニーペットHP

*8:中山、p.20

*9:同上

*10:同上

*11:同上

*12:同上

*13:同上、pp.20-21

*14:日本サウナHP

*15:株式会社日本サウナHP