「サウナのロウリュが熱い仕組み②」では、ロウリュが熱い仕組みの1つは皮膚表面での結露により発生する潜熱だと紹介しました。「サウナと結露・潜熱に関する論文」ではフィンランドのサウナ室で結露が起こっていることを検証した論文を紹介しました。では、サウナ室での結露は実際どのくらいの量発生しているのでしょうか。今回は結露する量について考えてみます。
サウナ室の結露と潜熱
「サウナと結露・潜熱に関する論文」では1つ目の、本場フィンランドのサウナ室の結露について考察している論文を見てみました。結露は起こっている、ということが論文からもわかったわけですが、今回は2つ目の疑問、ではどのくらい結露しているのかについて考察します。
汗か結露か?
通常サウナ室にいる時以上に、ロウリュの後にはどばっと汗が出ます。日本でも、ロウリュの後の大量の水分は汗だけではなく湿度の上昇によって結露が生じた結果のものであるという考察があります。『サウナあれこれ』では、ロウリュ後の汗について以下のように説明しています。
部屋に入るとすぐ全身に汗が吹き出したように水滴がつきます。この場合は、空気中に含まれている水分が冷たい身体に触れて凝縮し、水滴になったものです。サウナやスチームバスの場合には、この凝縮水によって肌が刺激され、発汗が促進されるといわれています。*1
つまり、全てが身体から出た汗なのではなく、空気中の水蒸気が身体に触れて、結露し、水滴になっている、と言うのです。
「サウナのロウリュの湿度計測」で見たように、ロウリュをすると一気に湿度が上昇します。特に施設側が行うロウリュサービスは、かける水の量も多く、湿度が上昇することがわかりました。「サウナのロウリュが熱い仕組み②」で見たように、サウナ室の湿度が一気に上昇すると、空気が水分を含みきれなくなり、皮膚表面に触れたところで結露が起こります。つまり、空気中の水分が目に見える水滴になるわけです。
とはいえ、湿度が上がれば汗も蒸発しにくく、体温調節も効率よくできないわけですから、実際に汗もたくさん出ていると考えられます。ロウリュサービスによって実際どのくらい結露が生じるのでしょうか。簡単な実験をしてみました。
実験方法と結果
サウナ室での結露がどのくらい起こっているのか知るために、ペットボトルに2種類の温度の水を入れてロウリュサービスを受けてみました。お店のスタッフが水をかけるロウリュサービスで、着衣で入るタイプのものです。ロウリュ前、ロウリュ中、ロウリュ後にペットボトルの表面にどれくらい水滴がつくか見てみました。
人間の体温に近い約34℃のものと、体温よりも低い温度の20℃のものを用意しました。直前に水温を計測しましたが、ロウリュを受けるまでに水温が上がると考え、33.9℃、19.8℃で用意しました。
ペットボトルをロウリュ前からサウナ室に置いていましたが、どちらにも水滴はつきませんでした。ロウリュが始まり少し経つと、表面に水滴がつき始めました。
ロウリュ後の写真です。左が20℃、右が34℃のものです。20℃の方ははっきり水滴がついているのがわかります。34℃の方も、表面にうっすら水滴がつきました。ロウリュによって、20℃のペットボトルにはかなりの量の水滴がつきました。当然ペットボトルは汗をかきませんから、これらは全て結露による水分だということです。
ロウリュで身体につく大量の水滴の正体
20℃のペットボトルには、ロウリュによってかなりの量の水滴がつき、結露による水分がはっきり観察できました。
一方、体温に近い34℃のペットボトルはうっすら水滴がつく程度でした。ロウリュを受けた時に私たちの身体には大量の水滴がついています。このペットボトルの水滴を見ると、その中における結露による水分の量は、ほんの一部のように思えます。つまり実際に汗も大量にかいているということになるでしょう。
「サウナと汗 サウナ室でかく汗」で見たように、湿度が高いサウナ室ではそもそも汗が蒸発しにくく、目に見える無効発汗の汗をたくさんかきます。ロウリュをするとサウナ室の湿度は高くなりますから、目に見える汗も多くなるわけです。ロウリュサービスを着衣で受けるところもありますが、服を着ていれば更に汗は蒸発しにくくなり、体温調節が効率よく行われない上に服の中に汗が溜まるので、たくさん汗が出ていると感じるでしょう。
ロウリュで身体に大量につく水滴は、蒸発しにくいため身体に残る無効発汗の汗と結露の水分が合わさったものだと言えそうです。
こうなってくると、汗と結露による水分の割合が実際どのくらいなのか気になってきます。次回は、その割合に迫ってみたいと思います。
参考文献
中山眞喜男(2008)『サウナあれこれ』、公益社団法人日本サウナ・スパ協会
*1:中山、p.48