Saunology -Studies on Sauna

Saunology -Studies on Sauna-

サウナについて調べ、考え、まとめるブログ。知れば知るほど、サウナにはまだまだ謎がある。その謎を解き明かしていくために、サウナについて様々な角度から考察してサウナ理解を深めます。身体で感じるだけでなく、頭で仕組みを考えるとサウナはもっと楽しい。サウナ好きがサウナをもっと知りもっと楽しむために始めたサウナ考察ブログ。 お問合せは下記までどうぞ。 saunology37@gmail.com

サウナの日①

 明日、3月7日はサウナの日とされています。毎年サウナ施設でキャンペーンがあったり、サウナ関係のイベント が開催されたりする、サウナの記念日のような日。3月7日はいつから、どのようにしてサウナの日になったのでしょうか。また、フィンランドには日本とは別のサウナの日、サウナデイがあるそうです。今回は、サウナの日について考えてみます。

 

サウナの日とは

 サウナの日と言えば、満37歳の人と同行者1名が対象店舗のサウナを無料で楽しめる日、として知っている人も多いのではないでしょうか。今年もこのキャンペーンは開催されており、今年の対象店舗はサウナの日協賛店一覧の通りです。明日はこれらの店舗に行く予定の方も多いのではないでしょうか。

サウナ サウナの日

(画像出典:SKYspa YOKOHAMA HP)

 この「サウナの日」、歴史は意外と長く、1984年の3月に日本サウナ協会(現日本サウナ・スパ協会)によってサウナの語呂合わせから「サウナの日」と制定されたのが始まりです*1

 「サウナの日」の古い活動として、1994年3月の『朝日新聞』朝刊には「サウナの日に献血キャンペーン」という見出しの記事があります。この記事では、「日本サウナ協会*2が推進する『サウナ健康の日』の七日、同協会が日本赤十字社の協力で全国献血キャンペーンをした」*3と紹介されています。協会は1981年には九州で献血キャンペーンも行ったようで*4、健康という側面を重視した活動も多かったのかもしれません。

 また、協会は1998年には、「サウナの日」企画として協会が加盟する店で使える「全国共通サウナ入泉券」を10名にプレゼント、という企画も行っています。希望者は2月15日までにはがきで応募するという形だったそうです*5。翌年の1999年の「サウナの日」企画は同じく加盟店で使える「全国共通サウナ入泉券」を2枚1組で、先着20人にプレゼントするという企画が行われました。この年は入泉券だけでなく、「サウナの効能を知ってもらうために」*6サウナ健康読本『SAUNABOOK』ももらえたそうです。こちらもはがきで応募という方法だったようです。どちらも地方版(98年は石川県・99年は山梨県)の記事なので、全国的にはもっとプレゼントしていたのかもしれません。「サウナの日」にまつわる企画は、結構前からあるのですね。

 

日本サウナ党

 「サウナの日」を制定した日本サウナ協会、今の日本サウナ・スパ協会の始まりは、1971年にさかのぼります。1971年に、「サウナ営業者、サウナ愛好家らが東京で日本サウナ党を結成」*7したのが始まりだそうです。
 日本サウナ党、初代党首は代議士の川崎秀二だったそうです。

サウナ サウナ党 党首

(画像出典:Wikipedia、「川崎秀二」の項)

さすが初代党首、典型的なサウナ顔ですね!(※Saunologyの主観)

 3周年を迎えたところで、党首は川崎秀二から二代目の小川一平(観光会社副社長・元代議士)に代わります。川崎が忙しくなったため、「比較的時間の自由がきく小川氏にオハチが回った」*8のだそうです。体重100kg近い川崎から50kgそこそこの小川への交代は、「サウナの常連に多いデブの代表から、少数派のヤセの代表へ政権交代ですな」*9という党首の言葉と共に新聞でも報じられました。

サウナ サウナ党 党首

(画像出典:『朝日新聞』、「『政権』交代」、1972年9月3日)

二代目党首、細いですがこちらも安定のサウナ顔ですね!(※Saunologyの主観)

 この日本サウナ党、結成当初党員300人弱でスタートし、3年目には党員が3万人をこえたそうです*10。ここでもブームを感じます。役員名簿には大橋巨泉、加藤芳郎、竹腰美代子らが入っていたようです。
 日本サウナ党は1978年に「日本サウナ協会」と名称を変更し、1990年には、「社団法人日本サウナ協会」として法人化し、2006年に「社団法人日本サウナ・スパ協会」という名称になり、2012年には公益社団法人と認定されます。
 また、サウナ党と聞くと思い出すのが、「なにしろ私はサウナ党ですから。自民党じゃなくて、もうサウナ党!」という言葉でしめくくられる平沢勝栄のインタビュー記事です。

saunners.saunasoken.jp


 サウナが空前のブームと言われる今、日本サウナ党の復活を願ってしまいます。

 

日本サウナ・スパ協会の歴史

 日本サウナ党の発足から始まった日本サウナ・スパ協会の歴史について、公益社団法人日本サウナ・スパ協会「日本サウナ・スパ協会ご案内」を参考にまとめてみました。

日本サウナ・スパ協会


【各種ルールの整備についての補足】

・衛生確保の自主基準(1994年)

1994年策定、2001年・2003年改訂。施設全般・浴室・サウナ室・露天風呂・休憩室、など要素ごとに設備の基準や消毒・清掃・点検の頻度などを定めている。「岩盤浴」については2004年に追加。

 

・サウナ設備設置基準(1996年)

東京大学大学院工学系研究科の鎌田元康教授を委員長に消防庁、主要消防局、関係団体で構成する委員会で策定。

 

・消防法改正に伴う「サウナ設備設置基準」改定(2004年)

サウナ設備設置基準の改訂版、火災予防技術情報第27号として地方の消防関係機関に提供。「電気サウナ設備編」と「ガスサウナ設備編」に分かれており、それぞれ用語の定義や設置要領、点検や清掃などの維持管理についてまとめている。

 

 1970年代以降、日本でサウナが増えていく中で、日本サウナ党から始まった日本サウナ・スパ協会は名称や形態を変えながらサウナに関する基準の整備やイベント開催、国際交流などをしてきたわけです。「サウナの日」もそうした活動の一つなわけですね。

   

ヘルシンキサウナデイ

 満37歳と同行者が無料で対象店舗のサウナを楽しめるというのも粋なイベントですが、フィンランドでは3月に更に大規模なイベント、ヘルシンキサウナデイが開催されています。サウナデイには、加盟しているサウナに、なんと誰でも無料で入ることができるというのです。そして、この加盟サウナは公衆サウナに限らず、家のサウナなども含まれており、1000か所以上のサウナが加盟したと言います。

 今年のサウナデイは3月14日(土)に開催される予定で、公式サイトでいろいろな情報を見ることができます。サイトのトップには、次のように書かれています。

Sauna Day is an event that opens the doors to private saunas for everyone to enjoy on March 14, 2020.
The world is full of saunas that are often empty and seldom seen by most. What if we did something about this for just one day and invited everyone over for a sauna? Sauna Day is an event that opens the doors of the saunas for everyone to enjoy.

(サウナデイは誰もが楽しめるようにプライベートサウナへの扉を開くイベントです。2020年3月14日に開催されます。

世界にはサウナがいっぱいです。そのほとんどが、空っぽの時間が長くほとんど人の目に触れません。1日だけ、このサウナにみんなを招待したらどうでしょう?サウナデイは、誰もがサウナを楽しめるようにサウナのドアを開くイベントです。)*11

 家のサウナ、マンション・アパートの共同サウナ、ホテルのサウナなど、さまざまなサウナを誰でも楽しめるように開放しよう、みんなでサウナを楽しもう!という企画です。スケールがすごいです。

 自分の家のサウナを開放してもいいよ、という人はサイトから自分のサウナを登録します。個人が自宅のサウナを登録することも、企業・お店が商業用サウナを登録することも可能で、ゲストに軽食などをふるまったり、食べ物を販売することもできるそうです。サウナを登録する人は、自分のサウナを提供する時間、人数の上限(予約が必要かいつでもふらりと訪ねてよいか)等の情報をサイトにアップします。英語とフィンランド語両方で書いてもらえるとありがたい、と公式サイトには書かれていました。国内のゲストだけでなく観光客などにもオープンにしよう、ということなのでしょうね。

 

  サウナを登録する時に必要な情報は以下の通りです。

ヘルシンキサウナデイ

 

 こうして登録されたサウナは、サイトの地図上に表示されるようになります。そこから開放されるサウナを確認することができます。「開始時刻」「終了時刻」「男性用/女性用/混浴」という項目で絞り込み検索もできます。ピンの色が3色あり、"Free places"、"Full"、"No booking needed"と空き状況や予約が必要かどうかがわかるようになっています。地図はこのような形で表示されます。予約不要の緑ピンが結構たくさんあります。

サウナ サウナデイ

(画像出典:Sauna Day HP)

  ピンをクリックすると、そのサウナの詳細が表示されます。

f:id:saunology:20200305230147p:plain

(画像出典:Sauna Day HP)

 "READ MORE & BOOK"をクリックすると、更にサウナの詳細が表示されて、一番下にこのような情報が表示されます。利用できる時間や、予約の要不要、混浴かどうかなどです。予約が必要なサウナの場合、"BOOK"のところから予約ができるようです。

サウナ サウナデイ

(画像出典:Sauna Day HP)

 

 公式サイトでは、サウナに入る際の注意点についてもフィンランド語・英語の両言語で書かれています。

サウナ サウナデイ

(画像出典:Sauna Day HP)

 

 内容をポイントだけ見てみます。以下は抄訳です。

フィンランドのサウナでは何をすれば良くて、何をしてはいけないのでしょうか?楽しむためのヒントをまとめました。もちろん、厳密なルールはありません。わからないことがあれば、質問すれば大丈夫です。最も大事なことは、リラックスして楽しむことです。

 

1.熱とロウリュ

サウナでは石をストーブの上であたためて、そこに水をかけることで湿度を上昇させます。これを「ロウリュ」と言います。サウナ室の温度は75℃~85℃ですが、火のくべ方で調節できます(電気ストーブの場合も調節できます)。フィンランドでは薪サウナが最も良い熱を生み出すと考えられていますが、市内では電気ストーブが一般的です。ガスもありましたが、今では稀です。

 

2.健康効果

多くの研究がサウナには健康効果があることを示しています。古いフィンランドの格言によると、「サウナ、酒、タールで治らなければその病人は死ぬ」と言うほどです。

 

3.ソーシャルサウナイブニング

サウナは交流の場でもあります。フィンランドでは多くの政治・ビジネスに関係する重要な決定がサウナで成されてきたと言います。サウナに人を招くことは、その人へのリスペクトを意味します。それにふさわしい行動をしましょう。

 

4.リラックスがすべて

サウナは身を清めること、リラックスするためのものです。裸で入りますが、そこに性的な意味合いはありません。

 

5.裸は些細なこと

フィンランド人は裸でサウナに入ることを好みます。それは知らない人と一緒であってもです。自分の身体について恥ずかしがることはありません。もちろん、水着を着たりタオルを巻いて入ってもかまいません。公共のサウナでは、そうすることが求められる場合もあります。

 

6.男女交代制

多くの場合サウナは時間を分けるなどして男女別々に入りますが、混浴サウナも人気です。同行者と入る順番など話し合っておきましょう。

 

7.沈黙は大事

フィンランドサウナに厳密なルールはありません。しゃべって交流を楽しむのもかまいませんが、フィンランドではサウナ室で黙って座っている、ということも一般的です。

 

8.休憩とクールダウン

ロウリュはいつ行ってもかまいません。すでにサウナ室が熱すぎると感じたら、一緒に入っている人にその旨を伝えましょう。定期的に休憩、クールダウンをはさんでゆっくりサウナに入るのが一般的です。

 

9.サウナウィスクで白樺の香りを

フィンランド人は白樺の枝で作ったサウナウィスクで身体を叩き、血流を良くしたり香りを楽しんだりします。最近では季節を問わず冷凍のサウナウィスクも購入できます。

 

10.水分補給

サウナでは汗をかくこを避けられません。しっかり水分補給しましょう。サウナで定番の飲み物と言えば、水、ビール、サイダーです。

 

 厳密なルールはなく、リラックスして楽しむことが一番大事、としつつ、ポイントについて説明がしてあり、読んでおくと気軽にサウナを楽しめそうです。フィンランドのサウナはこういうもの!というところがないことに懐の深さを感じます。 

  前回のヘルシンキ・サウナデイについては、体験レポートをまとめた記事がMETOSのホームページに掲載されています。

metos.co.jp

 この記事ではヘルシンキ・サウナデイ発案者・主催者のヤーッコ・ブルンベリの自宅サウナに行ってみた様子も書かれています。

当日の朝に、アパートに入るためのセキュリティコードがメールで送られてきて、予約時間に部屋の呼び鈴を鳴らすと、バスタオル一丁姿のヤーッコさんがドアを開けフレンドリーに出迎えてくれました。キッチンからは、訪問者に振る舞うためにパートナーがせっせと焼いてくれている自家製フォカッチャの良いにおいが漂ってきます。*12

 本当に家のサウナに遊びに行って一緒にサウナを楽しめるのですね。アットホームな雰囲気が伝わってきます。
 記事ではこの他にも大型ホテルのサウナや、高層マンションの共同サウナのレポートも記載されています。写真もあり、サウナデイの様子がよくわかります。

 

  今回は「サウナの日」について考えてみました。サウナはいつ入っても気持ちいいものですが、記念日があって、その日はサウナをいつも以上に楽しもう、普段サウナに入らない人にも楽しんでもらおう、という試みはサウナ好きにとってもそうじゃない人にとっても楽しいですね。  

 

 

参考文献・資料

Sauna Day ホームページ

朝日新聞、「贈ります」、1998年2月3日、朝刊

朝日新聞、「サウナ入泉券プレゼント 日本サウナ協会」、1999年3月2日、朝刊

朝日新聞、「サウナの日に献血キャンペーン」、1994年3月8日、朝刊

 朝日新聞、「『政権』交代」、 1972年9月3日、朝刊

公益財団法人日本サウナ・スパ協会、「日本サウナ・スパ協会ご案内」

こばやしあやな、「ついにフィンランドで「サウナデイ」始動。日本にも持ち込めるかは価値観の転換次第!?」、METOSホームページ

 

 

 

*1:公益社団法人日本サウナ・スパ協会、「日本サウナ・スパ協会ご案内」

*2:現日本サウナ・スパ協会

*3:朝日新聞、「サウナの日に献血キャンペーン」、1994年3月8日

*4:公益社団法人日本サウナ・スパ協会、「日本サウナ・スパ協会ご案内」

*5:朝日新聞、「贈ります」、1998年2月3日

*6:朝日新聞、「サウナ入泉券プレゼント 日本サウナ協会」、1999年3月2日

*7:公益社団法人日本サウナ・スパ協会、「日本サウナ・スパ協会ご案内」

*8:朝日新聞、「『政権』交代」、1972年9月3日

*9:同上

*10:同上

*11:Sauna Day HP

*12:こばやしあやな「ついにフィンランドで『サウナデイ』始動。日本にも持ち込めるかは価値観の転換次第!?」