ロウリュの熱さについていろいろ考察してきましたが、サウナ室ではまずヒーターの熱による熱さが前提です。熱にも伝わり方等によって種類があります。「ここは輻射熱が強くて良かった!」なんて感想を言うこともありますよね。しかし、熱の種類についてしっかりと定義を確認したことがある人は少ないかもしれません。今回は、熱の種類について見ていきます。
そもそも熱とは
熱は『ブリタニカ国際大百科事典』では以下のように定義されています。
物体に出入りしてその温度を変化させるエネルギー。たとえば,温度の異なる2物体を接触させ,高温物体が冷えて低温物体が暖まるときに,前者から後者へ移るエネルギーが熱である。*1
また、『デジタル大辞泉』には「熱」の5つ目の意味として以下のような説明があります。
5 物体の温度差の原因となるもの。高温の物体から低温の物体へ移動するエネルギーの流れ。分子や原子の運動に関連するエネルギーの一形態。*2
つまり熱とは、物質間のエネルギーの流れ、特に温度が高い方から低い方へ移動するエネルギーの流れのことだと言えます。
熱の伝わり方とそれによる熱の分類
熱は温度の高い方から低い方へ移動するエネルギーの流れということですが、熱が高い方から低い方へ伝わる伝わり方には3つの種類があります。対流・伝導・輻射の3つです。違いは、熱が何によって運ばれるかというところです。
対流:空気や液体などの流れによって伝わる。
伝導:直接物質が触れ合うことで伝わる。
輻射:放射線(電磁波)で伝わる。
そして、この伝わり方の違いによって熱は対流熱、伝導熱、輻射熱に分類できます。空気や液体の対流によって伝わる熱が対流熱、直接物質に触れることで伝わる熱が伝導熱、放射線(電磁波)によって直接伝わる熱が輻射熱です。それぞれ具体例も考えながら違いをまとめてみました。
輻射は伝導のように直接触れることもなければ、対流のように空気や液体によって伝わるのでもない、間に物がなくても伝わる伝わり方です。何も物質を介さず、直接私たちの身体に届くのが輻射熱です。 例えるなら、スタジアムに人が沢山いてウェーブを作っていき、端から端まで到達するのが対流熱、誰も人がいなくても端から端に直接届くのが輻射熱、ということになります。物質を介さないので、宇宙のような無重力空間でも熱が伝わります。太陽の熱も、宇宙空間を経て地上の私たちに届いていますよね。
この輻射熱、辞書では以下のように定義されています。
遠赤外線の熱線によって直接伝わる熱の事。つまり、高温の固体表面から低温の固体表面に、その間の空気その他の気体の存在に関係なく、 直接電磁波の形で伝わる伝わり方を輻射といい、その熱を輻射熱という。太陽の自然な暖かさや、薪ストーブの熱なども輻射熱によるもの。*3
輻射熱の定義に「遠赤外線の熱線によって直接伝わる熱」とありますが、遠赤外線とは何でしょうか。
遠赤外線とは
サウナ室でも遠赤外線ヒーターというのはよく耳にします。「今日は遠赤外線側だった」なんて言いますよね。どういうヒーターが遠赤外線ヒーターかは見てわかりますが、遠赤外線とはそもそも何でしょうか。『デジタル大辞泉』の定義は以下のようなものです。
赤外線のうち、波長が長く、100~25マイクロメートル程度の光線。水や高分子物質・有機物に吸収されやすく、ヒーター・調理器・サウナなどのほか、除菌・脱臭にも利用。遠赤外光。*4
電磁波は空気中を伝わる波のようなものですが、これにはいろいろな種類のものがあります。色や光として私たちの目に見えるものと、見えないものがあります。赤外線は、この中の目に見えない「波長が約0.72マイクロメートルから1ミリメートルまでの電磁波」*5のことです。赤外線の中で更に波長の長さによって、近赤外線、中赤外線、遠赤外線と分けて呼んでいるわけです。私たちがよく聞く遠赤外線は赤外線の中で波長が長い光線のことです。
(画像出典:株式会社ビジョンセンシングHP)
赤外線は1800年に発見され、「物質の温度を高める性質を持っている」*6とされています。電磁波の中で、人体などの物質が一番熱として受け取りやすい範囲の周波数を「赤外線」と呼び、更にその中で波長の長さによって近赤外線、中赤外線、遠赤外線と分類されているわけです。
近赤外線と遠赤外線の違いは波長の違いです。近赤外線は遠赤外線より波長が短いため、温度が高い放射体になると言います*7。どのように使い分けているかは、「被加熱物がどの波長を吸収するか」*8だと言います。つまり熱を受け取る方の物質の材質などによって使い分けるということです。
遠赤外線は調理の方法としてもよく耳にする言葉かと思います。炭火焼が美味しいのも、遠赤外線によって熱が伝わる調理方法だからだと言われています。炭は熱すると遠赤外線を沢山発します。直接その炭の上に置いていなくても、直接火を当てなくても、遠赤外線、つまり輻射熱によって食材を温めることができるのです。輻射熱による加熱は表面を均一に加熱し、うま味を逃がさないとされています*9。
今回は熱の種類について整理してみました。サウナ室では、どこから何熱によって熱が私たちに伝わっているのでしょうか。次回は、サウナ室の中の熱について考察します。
参考文献
株式会社ビジョンセンシングHP、「遠赤外線の波長帯域」
七輪本舗HP、「炭火料理がおいしいわけ」
日本ヒーター株式会社HP、「遠赤外線・近赤外線について」